本棚のすき間

読書・書店・学校図書館についてのあれこれ

きつねのひと

斉藤洋さんの『サブキャラたちの日本昔話』偕成社 を読みました。

浦島太郎でいじめられているカメはどうして浜辺にいたのか、桃太郎の犬はきびだんごひとつでどうして鬼ヶ島に行くことを受けいれたのか、金太郎に出てくるクマはほんとうに金太郎とすもうをとったのか……。

言われてみると、気になるというかそういう細かいことにつっこむのはナンセンスと勝手に決めつけて自然と受けいれていたことに気づかされるというか。

カメや犬、クマ目線で、だれもが知っているあの昔話が語られる。

 

凄く面白かった。

今まで自分が抱いてきた物語に対するイメージとは全然違うところに運んでくれる。そしてどの話も滑稽ででもどこか切なくて、もう一度昔話自体を読み返したくなる。

桃太郎の犬の話が特に面白かった。

きびだんごひとつで鬼ヶ島に行くのに付いていく、というのには、犬には犬なりのきちんとした理由があって、サルにはサルなりの理由がある。キジにも……?

物語には必ず、背景がある。バックボーンがあって、だれしもがその経験に則ってなんらかの行動をとっている。なにかを決断し、なにかを諦め、なにかを手にする……

 

思えば昔話というのはそういう背景はたいてい省略されているし、展開はスピーディで疑問を持つひまさえ与えてくれない。

それはそれで、想像する余地がたくさんあると言えないこともないんだけど、でも、物語の中に確かにその人物が、キャラクターが、生きものが存在するんだとしたら、物語以前のことがなくちゃいけない。

 

今作ではカメ、犬、クマの話だけだったけれど、他にも昔話にはたくさんのサブキャラが登場する。

ぜひ、斉藤洋さんには続編というか、ほかのサブキャラたちにもスポットライトを当てた物語を書いていただきたいと思った。

 

子どもたちにも早く紹介したいし早くたくさんの子に読んでほしい。

 

 

斉藤洋さんといえば、個人的には『白狐魔記』シリーズがまっ先に頭に浮かぶ。

中学生か高校生のころ、まだそんなに色々本を読んでもいないし、読書大好きっていう感じでもなかった時期に、何度も読み返したシリーズ。

 

歴史にもそれほど興味がなかったし、ファンタジー小説にハマっていたわけでもない。

でも、この仙人のもとで修業をし、変化の術や不老不死のからだを手に入れたきつねの物語にどういうわけか惹かれて惹かれて仕方がなかった。

きつねから見た人間の世界が描かれるんだけど、鎌倉時代の頃から話が始まるので、当然、戦の世。血みどろの世界。

殺し合う人間を見るきつねの、冷静で、論理的な目が当時若すぎたじぶんの中のなにかにフィットしたんだと思う。

 

このシリーズを読んだことがあって、好きだというひとが身近にひとりだけいた。

いいよね、あれ、と言い合えたときの嬉しさ。

 

雑多になってきたけど、ブログってきっとそういうものですよね。