『まわるよる』
『まわるよる』
作者 tupera tupera
小学館
あらすじ
寝る前にみていたテレビの光景が、夢にでる、というよくある話。寝ぼけまなこで回転寿司の番組をみていた主人公は、お母さんに「ベッドに行きなさい」と言われ、たこのぬいぐるみを持って、じぶんの部屋に向かう。
主人公のベッドは厚みのある白いマットレスに、赤いかけ布団。
そのフォルムはどうみてもあれ……。
そしてねむりにつくと、とつぜん、ベッドががたんと音を立てて動き始める。ぱかっと何かのドアが開き、主人公は眠ったままベッドごとどこかに流されていく。
そこは回転寿司のレールの上。
主人公はマグロのお寿司になってしまっていた……!
ほかにも、子どもたちが様々なお寿司となって、同じように流されていく。
そして、その先で待ち受けているのは……。
感想
すごく短い絵本で、あっという間に読み終わります。
でも、ずっしりとした読後感。
というのも、夢でした、よかった、というものでなく、本当にあれは夢だったのか? という疑問が残るような仕掛けがあるのがポイント。
読み聞かせをしたときも、子どもたちから「えっ、あれがある!」とか「現実になってる!」とか声をあげ、「こわーい」という声もちらほら。
いつもじぶんがしていることも、目線を変えればとてもおそろしかったり、残酷なことに思えたり。
でもだからこそ、「いただきます」という言葉が形だけでなく、そこにきちんと感謝の気持ちをこめられますように、と思えたりも。
そして、タイトルの『まわるよる』。
主人公が回転寿司のレールにのって回る、そんな夜という意味もあるだろうし、もうひとつ、まわっているものがあります。
それは最後のページを読むとわかるようになっていて、それがまた、この絵本をよりホラーチックにさせているのですよね。
こわい本が大好きな子どもたち。
「こわかったあ」という声がもれる一方で「ぜんぜんこわくなかった!」という勇ましい声も。
そう声高に言うことで、こわがっているじぶんを守ろうとしているんじゃないの? といじわるな大人は考えてしまうのですが、ファンタジーをリアルに置き換えられない子にとっては、もしかしたらちっともこわくないのかも。
食育の勉強とかにも使えそう(?)だし、夏のホラーシーズンにもおすすめ。
一度読んだら忘れない、インパクト大の絵本でした。
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