本棚のすき間

読書・書店・学校図書館についてのあれこれ

読み聞かせが苦手すぎる司書がおすすめする絵本の話2

 

トマとエマのとどけもの みちをたどるおはなし

作 大庭賢哉

ほるぷ出版

 

 

お母さんに見送られ、トマとエマはおじいさんとおばあさんのところにとどけものをしにいく。

トマのリュックはぱんぱんで、なにが入っているかはまだわからない。

 

トマとエマが行く道にはふしぎがいっぱい。

しゃべるカエルがいたり、綿毛につかまって飛んでいくことができたり。

 

さらに、ページをよく見るとわかる。

トマとエマはふつうの人間より明らかに小さい……!

この世界はいったいどうなっているんだろう?

 

ふたりは町を抜け、洞くつをくぐり、木の枝を渡っていく。

果たして、ぶじにおじいさんとおばあさんにとどけものはできるのでしょうか。

そしてだいじなとどけものとは、いったいなに?

 

 

という感じで、ストーリー自体はわりとあっさりしてるんだけど、それぞれのページにかくされたしかけや遊び心が盛りだくさん。

最初に「このえほんはすべてのページの絵がつながっています」とあるように、どのページも次のページの続きとなっている。

子どもたちに最初にそれを伝えてから読み聞かせをはじめると「わーほんとだつながってる!」と期待どおりの声をあげてくれた。(なにも言わずに読みはじめたほうがいい、ということもあるかもしれないけど)

 

それから、トマとエマはどうやら小人の種族らしいのだけど、ページをめくっていくと、それよりもっと小さなひとたちがいるらしいことがわかる。

子どもたちもそれに気づいては「もっと小さい小人がいる!」とか言って、後ろのほうからは「どこどこー?」という声も。

 

さらに、この絵本の一番美味しいところ(と勝手に思ってる)は、トマとエマよりも小さな郵便配達員がいて、彼がどのページにも(ある都合でいないページもある)こっそり登場していて、後ろのページから読むと彼の物語になっているということ。

 

これは、自分で読んでいても「なにこれすごい!」ってなって大興奮したのを覚えているくらい、びっくりした。

トマとエマのおはなしとして一度読んでから、もう一度、郵便配達員のおはなしとしても楽しめる、一冊で二度美味しい絵本。

 

子どもたちにそのことを教えてあげると、「えー! すごおい! 読みたい読みたい!」と貸出希望が殺到し、大人気絵本となった。

 

しかも、言葉数が少なくて、このふしぎな世界はほとんど説明されていないので、いろいろと想像する余地がある、というのも素晴らしい。

 

個人的に絵のタッチがすごく好みで、いつでも見える壁に飾っておきたいくらい。

 

この、作者の大庭賢哉さんという人は児童書の挿絵や挿画としても活躍していて、本書が絵本のデビュー作とのこと。

 

漫画も出している。これがまた最高なので、絵本じゃないけどついでに。

 

 

郵便配達と夜の国

作 大庭賢哉

青土社

 

 

屋根裏の私の小さな部屋

作 大庭賢哉

青土社

 

このほかにトモネンというのも出していて、どの本も、漫画なんだけど、児童文学を読んでいるかのような読み味を持っている。

 

子どもたちが生きる日常に、ふいにあらわれるふしぎなできごとの数々。

引っ越す前の家の部屋につながるドアや、となり町に住んでいるらしいじぶんそっくりの女の子。

 

どのふしぎも、子どもたちが抱えている悩みやアイデンティティにつながっていて、それ以前と以後では子どもたちにちょっとした変化が起きている。

その描写というか経緯がとてもさりげなく、だからこそ、児童文学を読んでいるような感覚を味わえるのだと思う。

 

漫画はあまり普段図書館に入れていなかったのだけど、この二冊は自信をもって子どもたちにおすすめしたいと思い、購入した。

絵柄がかわいいこともあり、紹介するやいなや子どもたちも読みたがってくれた。

大人にもおすすめしたい。

岡田淳さんや、森絵都さんなんかが好きなひと、それから、ジブリ映画が好きなひとにもおすすめしたい漫画。

 

 

そんなわけで、大庭賢哉さんの作品、絵本でも漫画でも、これから出る新刊を楽しみにしています。

 

トマとエマのとどけものは、いつかじぶんにも子どもができたら、ぜったいにいっしょに読んであげたい。