本棚のすき間

読書・書店・学校図書館についてのあれこれ

初めての読み聞かせのことと、書店員から学校司書になって起きた奇跡について

書店に約三年間勤めていた。

最終的な担当は、文庫・新書・児童書・語学・資格試験・ラノベ・楽譜・カレンダー・MD業務、という感じ。

 

文庫・児童書の仕事がかなりのウェイトを占めていた。

元々、児童書は別のひとが担当していたのだけど、辞めてしまって、どうしようとなったので、じゃあやりますと言って。

そうしたら、かなり仕事量が増えていっぱいいっぱいに。

 

でも、当時児童書の担当をしていたことが、学校司書の仕事にものすごく活かせたので、やっぱり無駄なことではなかったと思う。

それに、結構児童書の仕事は楽しかったりもして。

 

かなり自由に売り場を任されていたので、大きなフェア台も比較的好きなようにコーナーを作れたりもしたし、出版社の方々といろいろな話をするのも勉強になる。

 

当時は宇宙にハマっていて、それはもう宇宙っぽい装飾を作ったり、福音館の営業担当の方にお願いして宇宙系の絵本を集めてもらったり。

正直言って売り上げはそんなに大した数字にならなかったけど、でも、ほかの書店との差別化としての役割は果たせたはず、たぶん。

 

 

その当時、児童書の担当を引き継いでしばらくした頃、店で、子ども向けの読み聞かせイベントを開くことになった。

それで、そういう人前でなにかをするのがなにより苦手なのに児童書担当になってしまったばっかりに、読み聞かせを担当することに。

 

店の上の方の偉いひとのなかに、読み聞かせに精通している方がいるということで、いろいろとレクチャーを受けた後で、いざ、人前に。

もう、いまでは毎日毎日数百人相手に読み聞かせをしているから多少は慣れてきたけど、あのころは読み聞かせなんてしたこともしようと思ったこともなかった。

 

緊張。口の中がかわいて、足がふるえたくらい。

 

四人くらいで、ひとり一冊ずつ読んだだけだから、すごく短い時間だったはず。でも、あまりにも長く感じて、どっと疲れた。

 

その後、手遊びもやる、ということになり、でも、そういうのがとてもとても苦手なので、じゃあ伴奏やりますと言って、にげた。

児童書コーナーに売っている音の鳴る絵本。小さなピアノみたいなあれの見本を使って、それっぽい伴奏を練習。適当にギターでコードを拾ってから、できるだけ楽に弾けるようにピアノバージョンにして、やってみた。

 

伴奏があったほうがいい、とみんなに言われて、あれはうれしかった。

ギターをやっていたことがこんなところで役に立つなんて。

 

 

読み聞かせイベントはその後、一ヶ月に一回のペースでやっていた。

月によってばらつきはあるものの、多い時は数十人、少ないと三人とかの日もあって。

 

それで、毎回来てくれる子がいて、しかも、いつも一番前できらきら目を輝かせながら読み聞かせをきいてくれていた。

特徴的な髪型をしていて、伝わるといいんだけど、あの、サランラップのCMに出ていた女の子みたいなおかっぱ。

だから、来ているとすぐにわかる。

 

いつもうれしそうに読み聞かせをきいてくれる子がひとりいる、というのが、やる側にとってどれだけ励みになるか、ということを、あの子は知る由もないだろうけど、ほんとにそうだった。

じぶんで、へたくそだなと思っていやになることの方が多かったなかで、あの子の笑顔にいやされ、励まされ、元気をもらっていた。

 

 

ここからが人生のふしぎで、面白いところなんだけど、

その後一年くらいしてから、書店員をやめた。

学校の司書になることができたので、名残惜しい部分もありながら。

 

小さな小学校に二年いた。

それから、大きな小学校に異動となって、いまがその初年度。

 

前の学校の六倍くらいの規模なので、子どもたちの数が信じられないくらい多い。

こんなの、ひとりひとりの名前を覚えるなんてむり! となっていた矢先のこと。

 

三年生のあるクラスのオリエンテーションで、見覚えのある子が。

 

髪型で、すぐにわかった。

あのサランラップの子だ、って。

 

読み聞かせをしていた時から二年以上経っていて、すこやかに成長してはいたんだけど、でも、たしかにあの子だった。

 

それで、借りる本選ぶ時間になったときに、

「先生、○○にいましたよね」

って、その子が話しかけてきてくれた。

 

「読み聞かせによく来てくれてたよね」

と言うと、うなずいてはずかしそうに笑っていた。

その笑顔が、やっぱりあの頃の笑顔とおんなじで、なんだかあたたかい気もちになった。

 

いまだに読み聞かせをするのは苦手だし、へただと思うし、あれなんだけど、でも、ときどきそれでもがんばろう、と思えることがある。

 

もしかしたら、その子のおかげかも。

 

 

その子はあのころと変わらずに、やっぱりいつもきらきらした目で読み聞かせをきいてくれている。