本棚のすき間

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大人にもおすすめしたい絵本4

『水おとこのいるところ』

イーヴォ・ロザーティ:作 ガブリエル・パチェコ:絵 田中桂子:訳

岩崎書店

 

水おとこのいるところ

水おとこのいるところ

 

 

開いたままの蛇口から流れだした水がたまって、はねて、すべっておちて、

人間のようなものが生まれた。

 

それはまさに水のおとこ。

 

突然現れた水おとこに、町の住人たちは大さわぎ。

あちらこちらをびしょびしょにしていく水おとこをつかまえようと、

やっきになって、水おとこを探しはじめる。

 

でも、水おとこはなかなかつかまえられない。

水たまりやはいすいこう、たまった雨水のところにとびこんで、

すがたを消していたのだから、見つかりっこない。

 

そうして、水おとこは暮らしにくい日々をすごし、

やがて……

 

時はながれ、少しずつ、住人たちは水おとこに心を開いていった。

水おとこが悪いやつじゃないということが、わかってきた。

 

けれど、あるひどいあらしの日のこと。

どこかから聞こえてくる声に、水おとこは耳をかたむけた。

 

「おいで、ここへ帰っておいで」

 

水おとこは、歩きだす。

どこかへと向かって。

 

 

 

感想

人は差別をする。いじめもするし、悪口も言う。

自分とは違うだれかのことを否定し、排除しようとする。

 

そこにある「おそれ」のような気もちが、この絵本の中では、

水おとこに対する冷たい態度となってあらわれている。

 

突然現れ、危害をくわえられ(びしょびしょにされる程度だけれど)、

不安感を引き起こすもの、というイメージが町のひとたちに植え付けられる。

それがすごい速さでほかのひとたちにも伝染し、

全体としての差別が生まれた。

 

ふしぎな世界観で、それ自体を楽しむこともできる絵本だし、

そこにある差別という目に見えないものを

心に直接突きつけられるような絵本でもある。

 

水おとこがその後町をはなれてどこに向かうのか、

そしてそれは正しい選択であり、正解なのか。

 

いろいろな解釈があるだろうし、

あっていい本だと思う。

 

純粋に、水おとこなんていたらこわい、

と受け取ったっていい。

 

でも、考えさせられる、というような無理強い感がない、というのも、

この絵本のいいところかも。

 

考えたくなる。

考えたいお年ごろの、大人と子どもにおすすめ。