本棚のすき間

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大人にもおすすめしたい絵本6(クマと森のピアノ)2017年出版絵本の個人的1位!!

『クマと森のピアノ』

デイビッド・リッチフィールド:作 俵万智:訳

ポプラ社

クマと森のピアノ (ポプラせかいの絵本)

クマと森のピアノ (ポプラせかいの絵本)

 

森の中で「へんなもの」を見つけたブラウンは、おっかなびっくりそれにふれてみます。

すると、ぽろん、と音がします。

気になったブラウンは次の日も、その次の日も「へんなもの」をさわりにやって来て、やがて、なかよしになります。

 

森にやって来た親子にそれが「ピアノ」であることを教えてもらい、また、都会に行けばもっといろんな音楽を聴けるし、有名にもなれると言われ、ブラウンは迷います。

森の仲間たちはなんて言うだろう……。

 

でもブラウンは都会に行きました。

 

そして、またたく間に人気者になり、ホールでコンサートをするほどのピアニストになったのです。

でも、ブラウンは思いました。「なにかがちがう。なにかが足りない」と。

ブラウンは森に帰りました。けれど森の様子が前とは違っていて……。

 

 

感想

まだこぐまだったブラウンが無邪気にピアノで遊んでいるうちに、大きく成長する頃には、素晴らしいピアニストになっている。

それは、このブラウンだけに起きることじゃなくて、世界じゅうのどんな子どもにも起こりうるんじゃないかなと。

 

そうしてそれだけじゃなく、今度は多くのひとに観てもらう、聴いてもらうチャンスを逃さなかった、というのが大事。

小さなころから好きで好きでそのことだったらだれにも負けない、ということがあっても、だれも知らないままだったら、それは、その本人だけのもの。

 

最近で言う、崎山蒼志くんがブレイクしたのも、これに近いのではないかな。

彼はあのネット番組に出ていなかったとしても、どこかでだれかが発掘して、同じような状況になってはいただろうとは思うけど。

 

運命の選択をしたブラウンが手にしたたくさんのものは、でも、ブラウンにあることを気づかせてしまう。

それは、手にしたものではなく、じぶんが持っていないもの。

欠けている、なにか。

 

そのことに気づいたブラウンは、その瞬間、今まで以上に、「彼ら」のことが大切に思え、なくてはならないものなのだと自覚する。

という部分がいい。

 

有名になったり、地位や名誉を手に入れたりして、それまでじぶんが大切にしてきたものをすっかり忘れてしまう、というひとは少なくない。

でも、じぶんの原点を思い返し、その想いを捨ててしまわなかった、というのがブラウンの素敵でかっこいいところ。

 

世の中の、上に立ったとたんにひとが変わってしまったようなひとたち(政治家だとか、会社の重役だとか)、そういうひとたちにぜひ読んでもらいたい。

 

ラストのシーンは、多くのひとの胸に響くのでは。

今までにいろんな絵本を読んできたけど、この作品ほど温かい気持ちになれた絵本はないかもしれない。

 

本当に、多くのひとに読んでほしい一冊。

子どもはもちろん、大人にも。

 

大げさだって言われるかもしれないけど、ほんと、一家に一冊あってもいいくらい。

 

ぜひ読んでみてください。