『ぼくは』
藤野可織:作 高畠純:絵
フレーベル館
あらすじ
ぼくはぎゅうにゅう。
きみがコップに注いだぎゅうにゅう。
きみがぼくをのんでも、ぼくは、いる。
きみのなかに、いる。
ぼくはパン。
きみがバターをぬったパン。
きみがぼくを食べても、ぼくは、いる。
きみのなかに、いる。
ぼくはえほん。
遠くのほんやさんからやってきたえほん。
ぼくは……。
感想
2013年に『爪と目』で芥川賞を受賞された純文学作家である藤野可織さんの、初の絵本です。
爪と目を読んで、ホラー×純文学というジャンルを初めて知りました。
作風が作風なだけに、この絵本の存在を知ったときには、いったいどんなぶきみでおそろしい絵本なんだろう、と勘繰ってしまいましたが、そんな必要はありませんでした。
ひとは、牛乳を飲んだり、パンを食べたりと、いろいろなものを消費します。
目の前からはなくなり、その存在はもうどこにもない、ように思えるそんなものたちですが、この絵本は、そうではないということを教えてくれます。
飲んだものも食べたものも、それぞれがちゃんとだれかを形成するもととなって、見えない状態で、たしかに存在している。
そしてそれは、口から入って栄養となるようなものだけではありません。
絵本だって、読み終わって、たなにもどしてしまえばもうどこかに消えてなくなってしまうかというと、そうではないですよね。
読んだ内容が心に残り、その時に感じたいろいろなことはその子の人格形成にも影響を与えるでしょうし、いつでも会える友だちとしてインプットされることもあるかもしれません。
人間は、様々なものを吸収したり取り入れたりしながら生きている。
もの、の目線で、そうしたことに気づかせてくれる素敵な絵本です。
藤野可織さんの、絵本、第二作目を楽しみにしています。
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