『あしにょきにょきときょうりゅう』
深見春夫
岩崎書店
あの『あしにょきにょき』シリーズのまさかの三作目です。
さんぽをしているポコさんのもとに、さかの上から大きなまめがころがってきました。
「わたしをにて食べてちょうだい」
とまめは言いました。
さっそく、まめをもちかえってにて食べたポコおじさん。
食べ終わると、やっぱり、左足がにょきにょきとのびはじめました。
足は森を抜け、トンネルに入っていきます。
トンネルを抜けると、そこにはきょうりゅうがいました。
きょうりゅうの時代にやって来たのです。
やがて、足はきょうりゅうの子どもたちが集まる場所にたどり着き、いっしょに遊んであげました。
巨大な足にとっては、ブランコやすべり台もお手のもの。
夕方になると、きょうりゅうのおかあさんたちが子どもをむかえに来ました。
でも、ひとりだけのこっている子がいます。
アシノサウルスのアシミです。
アシミちゃんのお母さんは、どこにいってしまったのでしょうか?
そして、ポコおじさんの左足は?
感想
前作までのセオリーを、最初のページからくずしてきます。
あの、大きなまめが今回はいきなり口をきくんです。
そこでもう、いつもと違うぞ、というワクワクが生まれます。
そもそもタイトルの時点であやしい気配は漂っています。
あしにょきにょきと「きょうりゅう」です。
これまで、森を抜けて町に出て、ごちゃごちゃするのがこの絵本のスタイルだったのが、唐突なきょうりゅうの登場。
しかもそれがメタファーとかモチーフとかそういうんでなく、ほんとに、きょうりゅうの時代に行ってしまうあたりが、この絵本のぶっとんでいる良いところだと思います。
でも、ただぶっとんでいるだけかと言うと、そうでもないのです。
今回はいままでよりもストーリー性があって、心にあたたかいものが残る(ほんのちょっぴりかもしれませんが)ようになっています。
きょうりゅうの親子が登場するのがポイントです。
でも、このきょうりゅう、名前といいデザインといい、その挙動といい、なにもかもがふざけているので、注意してください。
だって、まず、アシノサウルスです。
ため息が出るようなふざけっぷりです。
大好きです。
この作品は2018年9月30日発行の新しいものですが、まだまだ続編を読んでみたいと思いました。
作者の深見春夫さんは1937年生まれだそうなので、けっこうなお歳かもしれませんが、まだまだ現役でがんばってほしいです。
あしにょきにょきシリーズの三作品でした。
絵本ナビで、前2作を試し読みできます。