本棚のすき間

絵本や小説、図書館についてなど、本全般について書いています。

先日の記事でとばっちりを受けたかもしれない岩波少年文庫へのお詫びもこめて

先日書かせていただいた児童書の表紙についての記事で、引き合いに出した岩波書店の本がかわいそうだ、という意見は誰からも来ませんでしたが、個人的に、あまりよろしくなかったかなと反省しております。

どこかの出版社や、表紙絵を貶めようという気は全くありません。 

 

お詫びの意味もこめて(と言うと大げさですが)、今日は、岩波少年文庫の中から好きな本を二冊紹介します。

先に言っておきますと、どちらも、あの記事で例に挙げた『飛ぶ教室』を書いたケストナーの本です。 

 

まずは『点子ちゃんとアントン』です。

点子ちゃんとアントン (岩波少年文庫)

点子ちゃんとアントン (岩波少年文庫)

 

 お金持ちの家の女の子である点子ちゃんと、貧乏な家庭に育つアントンの友情とちいさな冒険のお話です。

 

アントンの家は母子家庭で、母親は病気がち。

代わりにアントンが家事をしたり、こっそりくつひもを売ったりして、生計を立てています。

 

一方、点子ちゃんの家は裕福なのですが、両親がちょっとどうしようもなく、お互いに家庭のことより大事なことがあることが読みはじめてすぐにわかります。

そんなある日、点子ちゃんは養育係のアンダハトと一緒に変装をして町に出ていき、路上でマッチ売りをするのです。

 

そんななか、アントンの成績や授業中の態度が問題となり、担任の先生がアントンの母親に手紙を送ろうとします。

が、それを知った点子ちゃんは先生にかけあい、手紙を送ることを思いとどまらせようとします。

 

マッチ売りをしていることがバレてしまい、家では、犯罪の影が……

 

という感じで、いろいろとやきもきしながらも、最後には温かい気もちで本を閉じることができるであろう一冊です。

ケストナーの児童文学には、親を想うやさしい子どもの姿がよく見られるのですが、そういうのって、なんだかずるいですよね(なにもずるくない)。

おすすめです。

 

次はこちら『ふたりのロッテ

ふたりのロッテ (岩波少年文庫)

ふたりのロッテ (岩波少年文庫)

 

児童文学がお好きな方々にとっては有名すぎる一冊かもしれません。

 

私は、成人してからケストナーという作家を知り、その作品を読みはじめました。

なので、ケストナーの作品を子どもの頃に読んで感動した、というひとがうらやましくてしかたがありません。

でも、実際にじぶんが子どもの頃にケストナーの作品を読んで、いまと同じように心に響いたかどうかはわかりません。

むしろ、あの当時のじぶんにこうした児童文学の良さがわかるとは思えないので、むしろ、よしとしていたりします。

 

ふたりのロッテ』の話にもどります。

この作品は、様々な場所からオーストリアの「子どもの家」にサマーキャンプに来た子どもたちの話です。

別々の場所から来たルイーゼとロッテというふたりの女の子があまりにも似ているために、ちょっとした騒動になり、やがて、ふたりの距離は近づいていきます。

 

話をしているうちに、生年月日等からふたりは双子だということがわかります。

お互いに、父親と母親、知らない方の親との暮らしを知るために、ふたりはあるひみつの計画を立てます。

その計画とは髪型等を入れ替え、お互いに相手になりすまして帰宅するというものだったのです……。

 

あんまり魅力的なあらすじが書けなくて申し訳ないのですが、こういうお話です。

 

この作品でも、ルイーゼとロッテのふたりが、本当のことを隠していた両親に怒りの気持ちも持ちながら、でも、底にあるやさしさがにじみ出ているところが大好きです。

 

子どもたちはか弱くて物事がわかっていなくて守られるばかりのもの、という感覚は、ケストナーの作品ではあまり当てはまりません。

もちろん、そういう部分もあるにはあるのですが、「子どもの涙が大人の涙より小さいなんてことは絶対にない」という有名なケストナーの言葉の通り、子どもも大人と同じように目の前の問題や疑問に全力でぶつかっています。

 

この作品はそういう力強さみたいなものもひしひしと伝わってくるのが好きなポイントのひとつです。

 

 

そんなわけで、岩波少年文庫はいまの子どもたちをわくわくさせるような表紙の作品は少ないのかもしれませんが(もちろん、わくわくさせてくれるものもあります)、読んでみれば夢中になれる作品はたくさんあります。

星の王子さま (岩波少年文庫 (001))

星の王子さま (岩波少年文庫 (001))

 

この文庫を読んで、本を好きになったという方もいらっしゃると思います。

私はまだまだ、読んでいない作品の方が多いので、あまり多くは語れませんが、児童文学という世界に与えてきた影響、育んできたものというのは、計り知れないのでしょう。

 

学校司書をしている間に、少しでも、その世界をより深く知っていきたいと思っています。

 

 

余談ですがそういえばこの前、小学校である五年生の女の子が「先生、ハッピーエンドの本の棚ってどこ?」ときいてきました。

 

ハッピーエンドの本の棚……

その発想は無かった、と思いました。

 

その子は、前にとても悲しい終わり方をする本を読んで、しばらくつらい気分を味わったことがあったそうです。

それで、ハッピーエンドの本を選んで読んでいるとのことで。

 

ハッピーエンドの本というと、もちろん、児童文学ではかなり多くの本がその中に入るのでしょうけども、時には、バッドエンドの本もあります。

(個人的に大好きなバットエンド作品といえば、断トツで『電話がなっている』川島誠 なのですが、ご存知でしょうか)

 

ケストナーの児童文学は、その点、後味の良い作品が多い気がします。

あとは、ルイス・サッカーの本も(先日刊行された『泥』はどちらとも言えないような終わり方でしたが)。

 

どれをおすすめしようかと思っているうちに、その子は別の子が返しに来た本に興味が移ったようで、「それ、ハッピーエンドで終わる?」と確認をしてから、その本を借りていきました。

 

今度また同じようにきかれたら、なにをおすすめしようかとまだ考えています。

ケストナーの本でもいいのですが、ここでもまた、表紙が地味なせいで「えー」と言われてしまうんじゃないかという不安が……。

 

図書館にハッピーエンドの本のコーナーを作るのを、今年の目標にします。

では。

ゲド戦記(6点6冊セット) (岩波少年文庫)

ゲド戦記(6点6冊セット) (岩波少年文庫)