『おなかのなかで』
島野雫
教育画劇
ある日、きつねくんが池のほとりでかもくんを見つけた。
きつねくんはそろりそろりと近づいて、
ぱくり、ごくんとかもくんをのみこんでしまった。
おなかいっぱいのきつねくん。
そのとき、
ぱくり、ごくん!
きつねくんは、大きな大きなおさかなさんにのみこまれてしまった。
まっくらなおさかなさんのおなかのなか、きつねくんはこわくてないてしまった。
ないているうちに、きつねくんは自分のおなかが動いていることに気がつき、
ペッ、とさっきのみこんだかもくんをはきだした。
きつねくんとかもくんはあたりを見回してみた。
すると、くらやみの先に小さな光が。
でも、穴は小さくて、とても出られそうにない。
がっかりするきつねくん。
かもくんは、のどにひっかかっていたりんごをはきだした。
すると……
感想
食べる側だと思っていた者が、突然、食べられる側になったとき、どんな心の変化が生まれるか。
純文学とかだったら、すごく暗い感じの話ができそうだけど、これは絵本なので、そんなに、というか全然暗くない。
おさかなさんのおなかの中は暗いから、ページのほとんどは黒いのだけど。
食う側も食われる側も、大きな何かに食われてしまえば、皆一緒の食われる側。
となると、目的というか、願いもただ一つとなり、協力してこの場から逃げ出そう、みたいなノリになるのかと思いきや、この絵本はそうでもない。
なんだか、まったりしていて、でも、やさしさがある。
オチに意外性はないといえばないのかもしれないけど、意外なことばかりが起きるのが絵本というわけでもないだろうし。
でも、この絵本を読んで、なにかが心に残っている。
それこそ、かもくんののどに引っかかったりんごのように。
それがなんなのかを考えるのが、この絵本の醍醐味なのかも。
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