『はこ』
小野不由美:作 nakaban:絵 東雅夫:編
岩崎書店
手にとった、あかないはこ。
ふると、コソコソ音がする。
雨のふる日に、はこがあいていた。
からっぽのはこ。
中身はどこにいったのかな。
メダカのためのえさのはこは、からっぽだったはずなのに。
あかないはこになって、ふると、カサカサ音がした。
かぜのふく日に、はこがあいていた。
中にはほこりだけ。
中身はどこにいったのかな。
にげだしたハムスターを探して、引き出しを引っぱった。
あかない。
ノックすると、カサコソ音がした。
くもりの日に、引き出しがあいていた。
中にはちいさなほねのかけら。
つぎは、いぬがいなくなった。
今度はどのはこがしまったの……?
まただれかいなくなるの……
感想
『十二国記』シリーズや『残穢』等の小説が人気の、小野不由美さんの怪談絵本です。
他の怪談絵本とはひと味違った、得体のしれないこわさが漂っています。
大人向けのホラー小説を書かれてきた小野さんならではの感覚が、絵本という枠のなかにしっくりくる形で落とし込まれていると感じました。
開かない箱に入ってしまったものは、やがて、帰らぬ形となって、その姿をあらわすことになります。
そして、中に入るものは、少しずつ、大きくなっていきます……。
短い文章のなかに、しずかな恐怖と、大きな不安が詰まっています。
最後の1ページで予期される、この絵本最大の絶望と恐怖に鳥肌が立ちました。
わかる子にだけわかる、そんな怪談絵本です。
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