本棚のすき間

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現役司書が自信をもっておすすめする、忙しい大人にこそ読んでほしい絵本7選!

先日、ツイッターで、「絵本を日常的に読んでいますか」というアンケートをとりました。

 

回答項目は、絵本を

 

・読んでいる(個人的な趣味で)

・読んでいる(仕事や育児のために)

・読んでいない(たぶんこれからも)

・読んでいないけど興味はある

 

です。

個人的じゃない趣味なんてないだろうと自分につっこみたいですが。

投票していただいた600人以上の皆さま、ありがとうございました! 

 

その集計結果がこちらです。

 

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予想では、仕事や育児で読むという人はいるけれど、趣味で読んでいる人は少ないだろうとふんでいたのですが……

趣味で読んでいる大人がこんなにたくさん……!?

読書や司書、絵本系のアカウントを中心にフォローさせていただいているので、そのせいかも、という気もしますが、それでも、すごいことです。

 

嬉しかったのは、読んでいないけど興味はある、という方も、結構な割合でいらっしゃるということです。

これはきっと、ぐっとくるような絵本と出合いさえすれば、絵本を日常的に読みたくなる、いわゆる絵本沼に引きずりことができるのではなかろうか、という想いがわいてきます。

 

絵本の良いところのひとつは、まず、読むのに時間がかからないことでしょう。

大人はだいたい、忙しいです。

家事やら育児やら仕事やら交友やらなんやら。

 

そんなあわただしい日々でも、ページを開いてから閉じるまで、十分も要らずに楽しめるのが絵本です。

そして、絵本にもいろいろありますが、疲れ切った大人たちをいやしてくれる絵本もたくさんあります。

小説にも負けないくらい深い物語があって、読後にはついその世界のことをいつまでも考えてしまうような絵本も。

 

ということで、読んでないけど興味はある、と答えていただいた方や、たぶんこれからも読むことはないと思っていらっしゃる方に、少しでも絵本とお近づきになっていただけるよう、全力でおすすめしたい絵本厳選7作を紹介します。

 

とても個人的な、ランキング形式となっております。

 

 

 第七位

『水おとこのいるところ』

水おとこのいるところ

水おとこのいるところ

 

村田さやかさんの『コンビニ人間』が一時期流行っていましたね。

ふつうの人とは少し違った感覚で生きている主人公とコンビニのお話。

あの作品に近いものを感じたのが、この絵本です。

と言っても、読んだのはこちらが先で、いろんな絵本を読み返しているなかでこの絵本を再読し、コンビニ人間のことを思い出したという感じなのですが。

 

〇あらすじ

開いたままの蛇口から流れだした水がたまって、はねて、すべっておちて、

人間のようなものが生まれた。

 

それはまさに水のおとこ。

 

突然現れた水おとこに、町の住人たちは大さわぎ。

あちらこちらをびしょびしょにしていく水おとこをつかまえようと、

やっきになって、水おとこを探しはじめる。

 

でも、水おとこはなかなかつかまえられない。

水たまりやはいすいこう、たまった雨水のところにとびこんで、

すがたを消していたのだから、見つかりっこない。

 

そうして、水おとこは暮らしにくい日々をすごし、

やがて……

 

時はながれ、少しずつ、住人たちは水おとこに心を開いていった。

水おとこが悪いやつじゃないということが、わかってきた。

 

けれど、あるひどいあらしの日のこと。

どこかから聞こえてくる声に、水おとこは耳をかたむけた。

 

「おいで、ここへ帰っておいで」

 

水おとこは、歩きだす。

どこかへと向かって。

 

 

 

人は、自分、或いは自分たちとは違うものを拒絶し、否定し、排斥しようとします。

それは、人類がたどってきた歴史が証明しているのですが、そうしたかなしい暗い部分を水おとこというキャラクターに投影したのが、この絵本です。

水おとこがいったいどうなっていくんだろう、と読んでいるときはすらすら進んでいくのですが、読み終わって本を閉じると、思考がぐるぐるしはじめました。

 

人間がしてきたこと、自分が水おとこだったら。

いろいろと考えさせてくれます。

 

大人にもおすすめしたい絵本4 - 本棚のすき間

 

 

第六位 

『おおきな木』

おおきな木

おおきな木

  • 作者: シェル・シルヴァスタイン,Shel Silverstein,ほんだきんいちろう
  • 出版社/メーカー: 篠崎書林
  • 発売日: 1976/01/01
  • メディア: 単行本
  • 購入: 7人 クリック: 95回
  • この商品を含むブログ (106件) を見る
 

有名な作品ですが、おそらく、多くの方は村上春樹さんが訳したものしか読んだことがないかもしれません。

書店には、ほんだきんいちろうさん訳のものはもうほぼ出回っていないでしょう。

 

これは好みの問題なので、どちらが良いというわけではないと思いますが、私はほんだきんいちろうさんの訳の方が好きです。

余韻と余白がよりしっかりある感じがして、心がしんとするのです。

 

〇あらすじ

むかし、りんごの木があって……

ちびっことなかよしだった。

 

まいにちちびっこはやってきて、葉っぱや木のみきや、えだとあそび、木になっていたりんごを食べた。

 

ちびっこは木が大好きだった。

 

だから、木もうれしかった。

 

 

けれど、ときは流れてゆき……

ちびっこはすこしおとなになり、木はいつもひとりぼっちに。

 

 

ところがある日、その子がひょっこりやって来た。

木は、遊んだり、りんごを食べたりして、楽しくすごしておゆき、と言った。

でも、その子は、お金がほしい、と言った。

 

木は、じぶんになっているりんごをもぎとり、町で売ったらどうだろう、とこたえた。

 

そこでその子は、木によじのぼり、りんごをみんな、もいでいってしまった。

 

木はそれで、うれしかった。

 

 

だが、それからその子は長い間来なかった。

ところがある日……

 

 

無償の愛、というようなテーマをこの絵本からは読み取れます。

一途、だったり、健気、だったり、いろんな言葉がこの絵本のキーワードになると思いますが、言葉で言い表せられない切なさというのもある気がします。

 

物語の感じ方も、きっと人によっては全然違う絵本です。

この本くらい、いろんな人の感想を聞いてみたい絵本もそんなにはありません。

 

読み聞かせにおすすめの絵本29『おおきな木』 - 本棚のすき間

 

 

第五位

『パパとわたし』

パパとわたし

パパとわたし

 

〇あらすじの代わりに

あらすじを少しくらいは書きたいと思うのだけど、

この作品については、なにも書けない。

 

文章自体がとても短い。

それに、物語らしい物語も、ほとんど、ないに等しい。

 

でも、読み終えた後に、深く、濃密ななにかがたしかに心に残っている。

 

その理由を考えることを、あらすじの代わりにしたい。

 

きっと、この作品の中のパパとわたしのような体験をしたことのない読者というのは、

数少ない、いや、限りなく0に近いのではないかと思う。

 

わたしはあそびたいのに パパはあそびたくない

 

パパははなしたいのに わたしははなしたくない

 

 

だれしもが、じぶんがこういう気分であるのに、

相手はそうじゃない、ということを一度ならず何度も経験しているはず。

 

子どもとおとな、子どもと子ども。

大人と子ども、おとなとおとな。

 

いろいろな組み合わせはあるだろうけど、

ひとがひととコミュニケーションをとる、ということは、そういうことのくり返し。

 

どんなに気の合う夫婦やふたごがいても、

いつもどんなときでも同じ気分ということはないだろうから。

 

ひととの距離のはかり方は

いつまでたってもわからない。

 

 

この本を読むと、記憶のなかに数限りなくあるそうした経験が、

景色を持たない思い出となってどばっとあふれてくるのかもしれない。

だから、ずっしりとした読後感がある。

 

 

 

一分で読めます。

でも、その余韻がいつまでも続いて、時おりこの絵本のことを思い出して、元気になったり、ため息をつきたくなったり。

どんなに近しい間柄であっても、それはあくまでも個人同士であり、お互いの気持ちはそれぞれにその時々によって違う。

あたりまえだけど、そんなあたりまえに傷つきながら、喜びながら人は一日一日を過ごしているのだということを再確認させてくれます。

 

大人にもおすすめしたい絵本2 - 本棚のすき間

 

 

第四位

『こびん』

こびん (らいおんbooks)

こびん (らいおんbooks)

 

〇あらすじ

たいせつなものをあずかったこびんは、波にゆられ、うみべのまちにたどりついた。

こびんを見つけた兄弟は、笑い合いながら返事を書く。

そして、また、こびんは海へと投げ入れられた。

こびんはまた、たいせつなものをあずかった。

 

こびんは夜の海をただよった。そのなかを、兄弟の笑い声でいっぱいにして。

にぎやかなはまべ、ゆきのふりつもるすなはま、きれいな花のさくかいがん。

こびんはいろいろな場所に旅をして、そのたびに、たいせつなものをあずかった。

 

それぞれの、たいせつなものは、こびんによってとどけられた。

そうしてそれは、いつか、どこかのだれかへのおくりものになる。

 

 

 

自分が生きているこの世界のことを、いつもより高い位置から感じられるような作品です。

というのも、ふつうに生きていると、少しずつ、視野が狭くなったり、身の回りのことにしか意識が向かなくなったりするかと思います。

この絵本を読むと、自分がとても大きなものに含まれているのだということに気づかされます。

 

大人にもおすすめしたい絵本1 - 本棚のすき間

 

 

 第三位

『だいじょうぶだよ、ゾウさん』

だいじょうぶだよ、ゾウさん

だいじょうぶだよ、ゾウさん

  • 作者: ローレンスブルギニョン,ヴァレリーダール,Laurence Bourguigonon,Val´eris d’Heur,柳田邦男
  • 出版社/メーカー: 文溪堂
  • 発売日: 2005/11/01
  • メディア: 大型本
  • 購入: 2人 クリック: 19回
  • この商品を含むブログ (11件) を見る
 

大切なひとの死、という重いテーマの作品ですが、読後、心にはかなしみだけではないやさしい何かが残りました。

 

受け入れる、ということと、自分にできることは何かを考える、ということ。

子どもも大人も、死の前ではひとしく無力です。

でも、そんな出来事が目の前に迫っていると知ったとき、できることならば、大切なひとが一番望んでいるようにしてあげたい。

 

死との向き合い方を考えさせてくれる一冊です。

 

 

第二位

『あかり』

あかり

あかり

 

題名通り、心にぽっとやさしくあたたかなあかりがともるような作品です。

この絵本は、女の子が赤ちゃんの頃からおばあちゃんになるまでが描かれています。

人生に寄り添うようにいつもそばにいてくれたお母さんのろうそくの存在が、読者のそれぞれの大切なものとリンクして、そっと、胸を打ちます。

人生はうれしく、輝かしいことばかりではないということを知っている大人が読んでこそ、そうした感動がより一層増すような気がするのです。

 

 

 第一位

『クマと森のピアノ』

クマと森のピアノ (ポプラせかいの絵本)

クマと森のピアノ (ポプラせかいの絵本)

  • 作者: デイビッドリッチフィールド,David Litchfield,俵万智
  • 出版社/メーカー: ポプラ社
  • 発売日: 2017/10/03
  • メディア: 大型本
  • この商品を含むブログを見る
 

ダントツの1位です。

この絵本がどうしてもっと話題にならないのかとふしぎでたまりません。

絵本では異例の十万部! とかなってもおかしくないくらい素晴らしい作品だと思っていて、いま、この記事を読んでくださっている方全員に買ってほしいと言っても、全然大げさじゃないです。

この絵本を買って、後悔する、ということは、きっとありません。

 

〇あらすじ

森の中で「へんなもの」を見つけたブラウンは、おっかなびっくりそれにふれてみます。

すると、ぽろん、と音がします。

気になったブラウンは次の日も、その次の日も「へんなもの」をさわりにやって来て、やがて、なかよしになります。

 

森にやって来た親子にそれが「ピアノ」であることを教えてもらい、また、都会に行けばもっといろんな音楽を聴けるし、有名にもなれると言われ、ブラウンは迷います。

森の仲間たちはなんて言うだろう……。

 

でもブラウンは都会に行きました。

 

そして、またたく間に人気者になり、ホールでコンサートをするほどのピアニストになったのです。

でも、ブラウンは思いました。「なにかがちがう。なにかが足りない」と。

ブラウンは森に帰りました。けれど森の様子が前とは違っていて……。

 

 

 

大人から子どもへのプレゼントはもちろんですが、大人から大人へのプレゼントにも良いと思います。

絵も素敵なので、表紙が見えるように部屋にディスプレイするのもおすすめです。

 

大人にもおすすめしたい絵本6(クマと森のピアノ)2017年出版絵本の個人的1位!! - 本棚のすき間

 

 

 

いかがだったでしょうか。

(ですます調とである調が混じっていてごめんなさい。過去記事から引っぱってきた文章があるので……)

一冊でも、読んでみたいな、と思っていただけたら幸いです。

公共図書館にある本もあると思います。

お子さんがいればお子さんと一緒に、いなくても子どもの本を選んでいるふりをして(自分はよくしています)探してみてください。

 

ひとりでも多くの人に、絵本の魅力が伝わりますように。

ではまた。