本棚のすき間

読書・書店・学校図書館についてのあれこれ

楽しい×学べる 学校図書館のあり方を変えたい司書の取り組み③

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勤めている小学校の図書館で「たとえてみよう」という企画を立てたことがありました。

どういったものかと言いますと、まず、お題を決めます。

私の学校では「○○小学校の図書館」という題で、募集をしました。

子どもたちには、それぞれ、自分たちが通っている学校の図書館がどういう場所か、たとえで表現してみてください、と伝えます。

 

たとえば、

「新しいアトラクションができたばかりの遊園地のような図書館」

「いつも寝ている布団の中のような図書館」

などです。

 

前者は、わくわくする場所というイメージで、後者は落ち着いて安心できる場所というイメージを表現したものになります。

 

場所は一ヵ所でも、そこに対するイメージというのは、一人ひとり違います。

また、似たようなイメージを持っていても、それを表現する言葉は、やっぱり、それぞれ違います。

そんな、表現する楽しさを知ってもらいたい、という思いがありました。

 

子どもたちからは、

 

バイキングのような図書館

雲の上にいるような図書館

あったかいふとんの中で夢でも見ているような図書館

ひみつきちのような図書館

ままのひざのうえにいるような図書館

ゆかいなゆうえんちのような図書館

きれいな夜空をながめているような図書館

ゲームセンターのような図書館

 

などなど、個性豊かなたとえが集まりました。

 

どの本を読んでもいいという自由で楽しいことが食べ放題のバイキングと表現されていたり、安心してまったりしているうちに眠たくなってくるような感覚がままのひざのうえとして表現されていたり。

子どもの発想や表現って、こういう企画を始めると、本当に自由で楽しいです。

 

短冊のようにした記入用紙は掲示板にはり、全校が見られるようにしました。

そして、これはすてきなたとえだと司書が思ったものは図書館だよりに掲載しました。

企画が終わったときには「えー、もっとたとえたかったのに」と言ってくれた児童も。

 

自分が感じていることやイメージを、たとえで表現する、という機会は、ふつうに学校生活を送っていても、なかなかないと思います。

ことばを工夫して、表現する。

そんな楽しさを知ることができたら、きっと、その子は本を読むときにもそれまでとは違った読み方ができるかもしれませんし、普段の生活でもあれをこうたとえたらどんな風になるだろう? と、いろいろなものやことを表現してみたくなるかもしれません。

 

そうした一歩が、たとえば文芸創作の道に繋がっていくかもしれません。

また、言語表現の幅を広げ、国語の能力向上にひと役買ってくれるかもしれません。

 

そんな一方的な願いを込めて、子どもたちにたとえる楽しさを知ってもらおうと、この企画を考えました。

もちろん、参加は自由なので、強制はしていません。

 

今回は図書館をテーマに行いましたが、ほかにも、様々なテーマが思い浮かびます。

~のようなクリスマスや~のように楽しみ、などなど、いくらでも広げることができるのが、この企画の面白さであり、強みでもあると思います。

 

三学期になったら、また新しいテーマで子どもたちからたとえを募集してみたいと思います。

 

 

 

ご存知の方はすぐにぴんときたと思いますが、この企画はほとんど、せきしろさんの著書『たとえる技術』という本の中身からいただきました。

たとえる技術

たとえる技術

 

この本は、

・たとえないより、たとえたほうがいい理由

・たとえを作る、いくつかの視点

・状態を、たとえる

・たとえるとできる、いろいろなこと

・感情を、たとえる

という見出しとなっており、それぞれのテーマや場面に沿って、様々なたとえが掲載されています。

 

ライブにおいて「盛り上がってますかー?」という言葉が多用される場面において、どのように言えば、オリジナリティを出すことができるか、という項では、

 

さるかに合戦で飛び出してくる栗のように盛り上がってますかー?

 

お湯が沸く寸前の電気ケトルの中のように盛り上がってますかー?

 

大浴場の使用済みタオル入れのように盛り上がってますかー?

 

クララが立ち上がった時のように盛り上がってますかー?

 

というように、どのように盛り上がっているのかをたとえで表現されています。

さるかに合戦の栗は勢いの良さが伝わってきますし、電気ケトルの中はもうぐつぐつと煮えかえっている感じでイメージできます。

使用済みタオル入れの盛り上がりは他とは違った盛り上がり方をしている時なのでしょう。

 

 

また、道ばたに落ちている手袋を見た際には、様々な想像が膨らみ、それがたとえに繋がっていきます。

せきしろさんが想像から作ったたとえがこちらです。

 

決闘が行われたかのように手袋が落ちている

 

道に迷わないために置いてあるかのように手袋が落ちている

 

魔界との穴をふさいでいるかのように手袋が落ちている

 

手袋を外して本気を出した人がいたかのように手袋が落ちている

 

ボンバーマンのアイテムのように手袋が落ちている

 

そういう習慣があるかのように手袋が落ちている

 

ただ道ばたに落ちているだけの手袋も、想像力を膨らませることで、様々な意味合いを持ち始めるということがよくわかります。

個人的には、ボンバーマンのアイテムのように、というたとえに笑いました。やったことがあるひとなら、あれのことか、となりますよね。

 

 

また、有名な『走れメロス』という作品の冒頭部分「メロスは激怒した」にたとえを追加してみる暇つぶしをせきしろさんは例として挙げています。

 

メロスは母親が勝手に部屋に入った時の中学生のように激怒した

 

メロスはワニワニパニックの後半のワニのように激怒した

 

メロスはデッドボールを受けた助っ人外国人のように激怒した

 

どれも、ああわかるわかる、とうなずかされてしまうのがこの本の凄いところです。そして、ただメロスは激怒した、だけじゃなく、このようにたとえを入れることでこんなにも映像的にその怒りをイメージすることができるんだ、という驚き。

 

読書好きの皆さまにも、ぜひ、自分だったらどのように表現するか、暇な時間にでも考えてみていただきたいです。そして私だけにこっそり教えてください。

 

『たとえる技術』には、他にも様々なたとえがたくさん収録されています。

この本を一冊読み終えたひとは、きっと、自分もたとえたくなります。

 

自分もそんな気分になっていろいろ考えてはみましたが、せきしろさんのように面白く、また的確にたとえることができないことを早々に知り、打ちのめされました。せきしろさんも昨日今日でこのたとえる技術を習得したのではないと思うので、同じように面白く、また自分なりにたとえることができるようになるまでには、相当な時間がかかりそうです。

 

まえがきの部分で、

この本は○○のような本である。

 

もしも本書を読んでたとえたくなったら、是非この○○を埋めてもらいたい。

 

 

と書かれているページがあります。

読み終えた後のあとがきの所ではなく、あえてまえがきでこう書かれているのがみょうににくいです。

 

著者の意向通り、この本を読んでたとえたくなったので、○○を埋めて、この記事を終わりにしたいと思います。

 

この本は学生時代のアルバムのような本である。

 

やっぱり、むずかしいですね。

『たとえる技術』面白そうだと思っていただけた方は、ぜひ、この本を読んで○○を埋めてみてください。

 

 

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www.nahdaannun.com

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お読みいただきありがとうございました。

それではまた。