『もぐらはすごい』
アヤ井アキコ:作
アリス館
絵本でありながら、自然科学の本でもある、そんな、一冊で二度楽しめる作品です。
もぐらがどんな風に土をほって、ほった土はどうしているのか。
土のなかで、もぐらはどんなものを食べて生きているのか。
まっくらな土の中、なにも見えないもぐらはどうやってえさを見つけたり、きけんを察知したりできるのか。
もぐらのからだにはどんな特徴があるのか。
まっすぐはえたやわらかい毛はなんのため?
小さなつぶつぶのたくさんある鼻先には、どんな役割が?
もぐらはどんなサイクルで、毎日をすごしているのか。
えさは、どれくらい食べる?
土の中で、もぐらはどんな暮らしをしているのか。
寝るところはどこ?
えさをためておく場所は?
うんちをするのは?
もぐらの子どもはどんな風にひとり立ちをするのか。
土の中でほかのもぐらと出会ったら?
捕まったら大変な天敵は?
もぐらはすごい。
というような内容で、やわらかいタッチでもぐらの生態が描かれています。
生きて動いているもぐらを目にしたことがあるひとは、そんなに多くはないと思いますが、その存在自体は、だれでも知っているなぞに満ちた生きもの、もぐら。
もぐらの最大の謎として、オスとメスの出会いについて、というのがあるそうです。
ふだんはオスとメスが出会っても、なわばり争いに発展し、けんかをしてしまうのですが、年に一度、出会いの季節があるようです。
でも、どのようにしてOKというサインが伝えられるのか、また、どう出会うのか、など、わかっていないことがたくさんあるようです。
この本をきっかけに、もぐらに興味を持って、土の中のどこかにいるであろうもぐらに想いを馳せる子どもが現れるかも……。
と、思ったりもしますがどうでしょう。
もぐらと言えば、岡田淳さんの『星モグラ サンジの伝説』という本を思い出します。
この本の主人公であるサンジは、流れ星が落ちたときに生まれたモグラです。
かあちゃんモグラに「なんでも食べないと強いモグラになれないよ」と言われ、サンジはそれを信じ、石も、岩も、鉄も(!)食べ、すくすくと育ち、ほかのモグラもびっくりの成長を遂げます。
サンジのまっすぐでけなげな物語は力強くもあり、どこか切なさもあり、大人が読んでも楽しめる児童文学です。
サンジはいかにして伝説の存在となったのか、ぜひ、読んでご確認ください。
それではまた。
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