本棚のすき間

絵本や小説、図書館についてなど、本全般について書いています。

『まんがでわかる「学力」の経済学』書評【子どもの学力】

『まんがでわかる「学力」の経済学』

中室牧子:著 星井博文:シナリオ 松浦はこ:作画

株式会社ディスカヴァー・トゥエンティワン 

まんがでわかる「学力」の経済学

まんがでわかる「学力」の経済学

  • 作者: 中室牧子
  • 出版社/メーカー: ディスカヴァー・トゥエンティワン
  • 発売日: 2018/12/13
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
  • この商品を含むブログを見る
 

帯にもある通り、この本は学力という点で伸びる子どもの育て方が書かれています。

でも、よくあるような育児、親向けの教育本なんかと違うのは、そこにはきちんとした科学的根拠(エビデンス)があるということ。

 

まことしやかに囁かれている、子どもの教育に関する様々なうわさや、よくある悩みに対する回答などについて、なるほど、と思ったことを紹介したいと思います。

 

「子どもをご褒美で釣ってはいけないのか?」

子どもに、ただ勉強しなさいと言って、素直に机に向かう子どもはなかなかいません。

テストが近づいたり、受験生だったり、何かの理由があれば必要に迫られるという形で勉強をする子どもの方が、おそらく多いはずです。

 

でも、親からすれば、日ごろからきちんと勉強をして、テスト前に焦って一夜漬けをしたりしないようにしてほしい、と思うでしょう。

そこで、ご褒美をあげるから、というやり方をしているお家もあるのではないでしょうか?

でも、何かをあげるから、何かをさせてあげるから、といったご褒美で、子どもに勉強をさせることについて、不安や疑問を持ったことがある親は多いでしょう。

 

その方法に意味があるのか、ということについても、科学的根拠から導き出される効率のいいご褒美のあげ方があります。

目の前のにんじん作戦が有効

子どもは純粋で、単純です。

目の前にある利益を優先してしまうのです。(大人もそうですが)

 

例えば、半年後に五千円をあげるとして、さらに一週間待てば、五百円プラスしてあげると言うと、多くの子どもが半年プラス一週間待つそうです。

しかし、今日五千円あげるとして、あと一週間待てば、五百円プラスしてあげると言っても、すぐほしい、いますぐちょうだい、と言う子どもの方が多いのです。

 

ならばどうすればいいのか。

この本では、その、目の前にある利益を優先する、という性を利用する、ということが書かれています。

しかしながら、そのご褒美のあげ方にポイントがあります。

 

アウトプットよりインプットにご褒美を

例えば、

「テストで良い点を取ればご褒美をあげる」

というのと、

「本を一冊読んだらご褒美をあげる」

というようなやり方(アウトプットにご褒美をあげるのか、インプットにご褒美をあげるのか)で、どちらの方がテストの点が上がったか、という実験をしたそうです。

すると、インプットにご褒美を与えられる「本を一冊読んだら」の方が、テストの点が上がるという結果になりました。

 

それは、子どもにとっては、「本を読んだら」や「宿題をしたら」といったインプットの方がやるべきことが明確だったからです。

「テストで良い点を取ったら」や「通知表で5をもらえたら」という漠然とした目標では、子どもはどう行動するのがいいのかわからないのです。

 

ご褒美をあげようとするのなら、子どもにしてほしいインプットを決めて、その対価としてあげる、というのが、学力向上には効果がある、ということですね。

 

読書をするから賢くなる?

以前もどこかで話題になっていたような気がしますが、読書をすると勉強もできるようになるのか? という話についてです。

 

以前、文部科学省は「全国学力・学習調査」で、「親の年収や学歴が低くても学力が高い児童の特徴は、家庭で読書をしていることである」と分析したそうです。

すると、多くのメディアは「子どもに読書をさせることが重要」と報道しました。

 

でも、果たして本当に、本を読んでいれば学力は上がるのでしょうか?

 

因果関係と相関関係

メディアの報道は読書をしているから学力が高い、という因果関係を決めつけていますが、そうではなく、学力の高い子どもはよく読書をする、という相関関係の可能性もあります。

 

勉強ができたり、文章を読むことが苦ではない子どもというのは、知的好奇心も高いでしょうし、本を集中して読むということも習慣としてできそうです。

(学校司書としては、読書をすれば学力が上がる、という説は、図書館利用の促進に繋がりそうで、いい話ではあるんですが)

残念ながら、読書そのものは学力向上に有効な魔法のような方法というわけではないようです。

 

さらにもう一つ、ここには考えなくてはならない別の可能性もあるのです。

見せかけの相関

「親の子どもに対する関心の高さ」という点が、読書と学力の関係にひと役買っているかもしれない、という点が挙げられます。

例えば、子どもに対する関心が高い親でしたら、子どもに勉強するように促すと同時に、本を買い与えている場合があるでしょう。

そうすると、ただ、読書だけが学力に影響を与えているのではなく、親の声がけなども、そこには潜在的に含まれているのかもしれないのです。

 

見せかけの相関を因果関係と誤って捉えてしまうということは、危険ということでしょう。

 

 

おすすめポイント

 今回私が読んだこちらの本

まんがでわかる「学力」の経済学

まんがでわかる「学力」の経済学

  • 作者: 中室牧子
  • 出版社/メーカー: ディスカヴァー・トゥエンティワン
  • 発売日: 2018/12/13
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
  • この商品を含むブログを見る
 

は下の本をまんがでわかる形にして出版されたものです。 

「学力」の経済学

「学力」の経済学

 

元々の本を読んでいないのでわかりませんが、小難しい話を読んでいると眠くなる私なので、読み通す自信がありませんでした。

 

が、今回、まんがになっているものは、その趣旨がとてもわかりやすく、さらっと読めるものになっていました。

なので、同じように小難しい文は無理! という方にも非常におすすめです。

 

内容については、元の本よりもかなりざっくりとしたものになっているのかもしれませんが、そのエッセンスを感じる分には十分なのではないでしょうか。

まんが版を読んでから、元の本を読む、というのもありだと思います。

今度書店に行った際に、中をチェックしてみます。

 

お子さんがいらっしゃって、その勉強への取り組みに不安がある方や、教育関係の方、子どもの学力に関心のある方、等々におすすめの一冊でした。

 

 

でもやっぱり、いつか、読書は子どもの学力に良い影響を与えているというはっきりとした科学的根拠が見出されるといいなと思います。(学校司書としてのつぶやき)

学校図書館での取り組みに関する記事です。

よければこちらもご覧ください。

www.nahdaannun.com

お読みいただき、ありがとうございました。

それではまた。