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【青春小説】『リバウンド』書評

『リバウンド』書評

『リバウンド』

E・ウォルターズ:作 小梨直:訳 深川直美:画

福音館書店

リバウンド (福音館の単行本)

リバウンド (福音館の単行本)

 

交友関係について

中学二年生という季節を過ごすために、一番大切なのは友だちの存在かもしれない。

なにをするか、より前に、だれとつるむのか。

でも、それも自分でぜんぶ決めることができるというわけじゃない。

大きな流れがあって、そこに乗っかる。

乗っかることができなくても、流されているうちにどこかで、なにかに引っかかったり。

 

中学生二年生の後半、交友関係ががらりと変わったことがあった。

よくいっしょにいた友だちが登校拒否になり、それにともなって、新たなグループに加入する必要が。

そこで、新たに親しくなった友だちは、クラス一のトラブルメーカー。

ほとんど毎日、先生に怒られていない日はないんじゃないかというくらい、厄介で楽しくて迷惑なことを無頓着に行動していた。

 

それまでは地味で、どちらかと言えば暗い感じの立ち位置にいた自分も、友だちが作るビッグウェーブに巻き込まれていくことに。

先生に怒られるのにも、少しずつ慣れていく。

意味よりも、時間に目がいくようになっていく。

 

あんなに馬鹿で、くだらなくて、楽しかった時間というのもほかにない。

だって、怒られていた時以外のことを思い出そうとすると、たいてい、笑っていたことばかり浮かんでくるのだから。

 

『リバウンド』について

この『リバウンド』という作品でも、交友関係がいかに大切かというところから、物語がスタートする。

主人公のショーンは、スコットという札付きのワル(と言っても、学内でひたすらイキっているような)と昨年度までつるんでいた。

 

そのせいで、いつも問題を起こすはめになってしまい、停学の一歩手前にまでなった。

両親にもがっかりされたし、学校のバスケットチームでは選手になれなかった。

 

今年度は、そんな最低な年にするわけにはいかない。

わかっている。

でも、スコットといっしょにいると、なんとなくその気にさせられて、気づいた時には嵐の中にいるはめになる。

 

新学期の初日、会って早々に、スコットは学校の敷地内でタバコを吸おうとする。

それに、舌の真ん中には、小さな鋲のようなピアスも。

 

皮肉をたっぷり効かせた言葉を浴びせて、スコットとごっこみたいなケンカをしていると、後ろから、だれかに押された。

ふり返ると、車いすに乗った生徒がいた。

 

知らない生徒だ。

でも、信じられないくらい生意気で、そこにいた野次馬をまきこむようにしてこちらを煽ってくる。

 

我慢の限界に達したショーンは、両手を拳に握りしめた。

が、車いすの生徒相手にけんかをして、また、問題を起こす……?

 

すんでのところで思いとどまった。

のに、

「むずかしい言葉は、つかってないぜ」

いきなり殴られ、抵抗しているうちに、車いすごと、スロープを転がり落ちはじめていた。

スロープを下り切った瞬間、地面にたたきつけられ、もつれ合ったまま相手を押さえつけようとしていると、

「なにをやっているんだ!」

ものすごい怒鳴り声がきこえた。

 

昨年度、嫌になるほどお世話になった、マカリー先生だった。

 

感想・レビュー

まずは文体が好み、というところで惹かれた。

バスケットって、球技の中でもかなり苦手な方だし、スラムダンクも読んだことがないくらい縁遠いスポーツなので、普段だったら表紙を見てすぐに、違う本に目がいくと思う。

でも、図書館の本棚を整理しているときに、ふとこの本が正しくない場所に入っているのを見つけて、ぱらぱらと読んでみて、そのクールで鋭い文体に夢中になった。

 

大事なのは、シュートして得点をかせぐことだけじゃない。「失敗したシュートを次にどうやって決めるかだ」

というデーヴィッドの言葉がある。

 

デーヴィッドは、有能なバスケットボールの選手だった。

それに、絵の才能もあって、両親はその未来に大きな期待をかけていた。

 

でも、事故に遭ってからは車いす生活になり、バスケットも、絵を描くことからも遠ざかってしまう。

そんなデーヴィッドとの出会いが、ショーンの日々を変え、ショーンの言動を変え、ショーンの人生を変えていく。

 

デーヴィッドが車いす生活になっていなければ、ショーンがスコットとつるむようになっていなければ、デーヴィッドとショーンのふたりは、親しくならないまま、学校生活を終えていたかもしれない。

でも、それぞれの、そんなマイナス(?)となった出来事のおかげで、ふたりは出会い、それまでにはなかった何かを見つけ、生きることの小さな意義のようなものを拾うことができた。

 

デーヴィッドは、ショーンにけんかをふっかけた時もそうだったけど、本当に、無謀で、向こう見ずな行動ばかりしている。

でも、その奥底に隠れているその理由にショーンが気づいた時、凄く胸が痛んだ。

でも、同じくらい、温かい気もちにもなった。

 

だれと友だちになるか、というのは、自分の意思だけではないところで、神さまのあみだくじのように決まっている気がする。

友だちとどう向き合い、どう交流していくか。

そっちの方が大事なのかもしれない。

そんな風に思わされた一冊。