冬休み前の図書館はかなりの盛況ぶりで、貸出返却手続き待ちの長い列が廊下にまでできていた。
ここの図書館では、普段は2冊貸出となっていて、夏休みや冬休みのような長い休みの前には特別貸出ということで4冊借りられるようになっている。
ちなみに、雨の日は3冊借りられる雨の日セールという企画も年中行っている。(セールという言葉が若干引っかかるけど、ほかにいい言葉がない……)
雨が降ると、校庭や中庭で遊べない。
それならば、図書館においで、いつもより一冊多く借りられる特典付きだよ、ということで、雨が降ったら図書館に行こう、をキャッチコピーにしています。
これがなかなか好評で、先生たちからも「いいですねえ」という声が。
雨の中遊びまわって、びしょぬれの子どもが教室にいたり、風邪をひいたりされるよりは図書館に行ってほしい、という気もちもあるのでは。
一日の途中で雨が降りだした日なんかは、みんな、嬉しそうに3冊だわーいとはしゃいでくれていたりするので、図書館としても嬉しい。
なので、普段よりも2冊も多い4冊貸出のタイミングでは、より特別感たっぷりに借りていく本を選んでいる楽しそうな子どもたちの顔が見られる。
でも、あまりにテンションがハイになってしまったためか、中には先のことを何も考えていないような児童もいる。
4冊全部、図鑑を借りていこうとする。
みなさんもご存じだと思うけれど、本というのは重い。
厚い本ともなれば凶器となりうるほどの重さと大きさだったりする。
4冊の図鑑をカウンターに持ってきた一年生の児童には、やんわりと2冊までにしようと提案。
借りていきたい気持ちはわかるのだけどね。
それに、借りていきたい本に制約を設けるのもあんまり好きじゃないんだけど、さすがに安全面も考えて。
昔、自分が小学生の低学年だった頃、夏休みだったと思うんだけど、凄くいろんな荷物を持ち帰っている帰り道だった。
なぜだか親に持たされたのが大きめの紙袋で、そこに、一学期に作ったねんどの作品だとか、おはじきのセットの箱だとかが入っていて。
気がつくと紙袋を引きずるようにして歩いていた。
当然、底が擦れてぼろぼろになり、あっと思った時には中身が全部、地面にこぼれてしまった後だった。
散らばった色とりどりのおはじきを見ていたら、いらいらしてきて、すぐそばにあった川に投げつけてしまった。
その、絶望的な状況が、どうにも悲しく、悔しかったのを覚えている。
引きずって歩いていた自分が悪いんだけど。
子どもたちが長い休みの前にたくさんの本を借りていく姿を見ると、そんな自分の幼い頃のしょうもない失敗を思い出してしまう。
本を入れる袋は、たいていみんな、布製のきちんとした図書袋だから、破れてしまうような心配は要らないとも思うんだけど。
たとえば、いま、車でどこかに行ってたくさんの買い物をして、その帰り道、車が動けなくなってスマホも使えなくて近くに電話もない、というような状況におちいったら、と考えると、なかなかにおそろしい。
子どもというのは、たぶん自分がそうだっただけじゃなく、みんな、絶望的な状況をたくさん乗り越えてくるのだろう。
苦い思い出を噛みしめながら、大人になるための上り坂をゆっくりのぼっていく。
いつか、苦かったはずの思い出がやけに甘く感じられたり、それ自体忘れてしまったりするんだろうか。
のぼってものぼっても、苦い思い出は苦い思い出のまま、いつまでも覚えていたいと思う自分は、もういい歳だけど、まだその坂をのぼっている途中かもしれない。
でも、小脇に抱えるのは重たい図鑑じゃなくて、お気に入りの文庫本。
そんなことを思った、二学期のおしまいの一日。
二学期はありがとうございました、と言ってくれる子どもたちもいて、ほっこりしてまた三学期もがんばろうと思えた。
最後の三学期。
それではまた。