本棚のすき間

読書・書店・学校図書館についてのあれこれ

『おしりたんてい』のセブン先行販売は悪の道なのか?

『おしりたんてい』という本はご存知でしょうか。

おしりたんてい (単行本)

おしりたんてい (単行本)

 

書店の児童書売り場に行けば、たいていは平積み・面陳されている人気のシリーズです。

おしりたんてい(既刊6巻)

おしりたんてい(既刊6巻)

 

書籍の売上好調を受け、2018年7月からはテレビアニメのレギュラー放送も開始。

 

私が勤務している学校でも、「おしりたんていの本ある?」と子どもたちによくきかれます。

でも、だいたいは貸出中で、棚にあることは稀です。

 

そんな『おしりたんてい』の新刊(?)(一昨年にイベント限定本として一度刊行されているそうです)が、2019年4月26日から「東映まんがまつり」内で初映画化される原作本として、再刊行されることになりました。

 

と、ここまでなら、誰も文句を言ったりはしないでしょう。

問題は、その原作本の販売方法です。

 

なんと今回、その『おしりたんてい カレーなる じけん』は2019年1月1日より、全国のセブン-イレブンとセブンネットショッピングで3か月間先行販売されるというのです。

つまり、本だからといって、書店に行っても3か月間は購入できないのです。

逆に言えば、書店は3か月間はその本を販売することができないということです。

www.poplar.co.jp

このポプラ社のやり方に対して、反応は大きく分けて二つだと思います。

 

まずは、購入する子どもたち、或いはその保護者の混乱に対する心配です。

子どもに限らずですが、情報を部分的に受け取ってしまう可能性は大いにあります。

「1月におしりたんていの新刊が出るんだって!」とだれかが言えば、友だち同士でそのうわさが広がって、肝心の、セブンでしか売っていないというところが抜けたまま、その声が保護者の元に届いてしまうでしょう。

 

そうすると、書店に行って、おしりたんていの新刊を探すも見つからず(当然です)、かなしい気もちのまま帰ってしまう家族もいるかもしれません。

店員に問い合わせをすると「そちらの書籍は書店での販売は3か月後となっております。現在でしたら、セブンイレブンにて購入ができますので、そちらでお願いします。ちなみに最寄りのセブンイレブンは……」などと言われる可能性も。

 

ここで、もう一つの反応である書店・書店員側の怒りが見えてきます。

 

『おしりたんてい』シリーズは現在では大人気のシリーズですが、その人気を支え、書籍の販売を行ってきたのは、全国の書店・児童書担当です。

『おしりたんてい』の最初の本が発売されたのが2012年10月です。

2013年の頃、私は書店員として働いていましたが、当時はそれほど大人気というわけではありませんでした。

が、その後絵本だけでなく読み物的なシリーズも発売されるようになり、それらが学校図書館でも購入され、じわじわと人気が広がっていったように思います。

 

そもそもこの『おしりたんてい』シリーズ、子どもたちは大好きですが、その内容や世界観に対して、眉をひそめる大人が多いというのも事実でしょう。

そりゃそうです。

顔がおしりの形をしていて、スイートポテトが大好きで、口ぐせは「フーム、においますね」。

かいとうUというおしりたんていのライバルキャラの頭は完全にあれです。(下商品画像の右にいるキャラです)

セイカのパズル 65ピース おしりたんてい

セイカのパズル 65ピース おしりたんてい

 

このお下品感満載の設定ですから、教育的関心の強い親であればあるほど、子どもをおしりたんていから遠ざけたい、と思うのかもしれません。

でも、子どもは純粋に楽しいものを欲します。

買いたくない親と買ってほしい子ども。

その葛藤というか、心のたたかいをたくさん生んでいる作品でもあるのではないでしょうか。

 

もちろん、このシリーズに肯定的で、子どもといっしょに楽しんでいる、という大人もいるでしょう。

全員がもれなく目くじらを立てている、とは思っていません。

 

私個人としては、このシリーズは、まあ、好きではないです。

ただ、子どもの頃の自分がこの作品と出会っていたら、きっとはまっていただろうなとも思います。

当時は学級王ヤマザキだとか、うちゅう人田中太郎だとか、コロコロ系の漫画ですが、そういうのが大いに流行っていて、自分もその波に思い切り飲み込まれていたのを思い出します。

ですから、今、自分がこの作品をあまり好意的に見られない(かなりの偏見も込みで)というのは、大人側の感覚で見ているからかもしれません。

 

子どもたちはおしりとかうんちとかそういう単語が大好きですし、これは、児童書としてそういうギリギリのラインをついてきたマーケティング重視の作品だと思っています。

でも、一方で子どもたちがそれを読んで楽しんでいるのも事実なのだから、それはそれとして、子どもと本を繋いでくれる貴重な本、とも思います。

難しいですね。

べつに、子どもが好きであると同時に大人が好きである必要もないとは思うのですが、皆さまはいかがでしょうか?

 

図書館で働いている身としては、おしりたんていの本、或いはおしりたんていみたいな本じゃなきゃいやだ、という子どもが増えないことを願いつつ、そういう子どもにどう読み物へのアプローチをしていけばいいものか、と悩むことも……。

 

 

話がそれてしまいました。

このシリーズが人気が出た要因として、発売されてからずっと、ポプラ社側の強烈なプッシュがあった、ということも、もちろんあるでしょう。

しかし、児童書担当が地道に発注、陳列、販売促進等をしてきたことが、その販売の支えとなっていたことは明らかです。

 

そんな書店・児童書担当に対する裏切りなのではないか、という反応がネット上でも多々見られます。

売上をコンビニにもっていかれる、という単純な嘆きももちろんあります。

でも、それ以上に、書店を大事にしてもらえていない、ということがここまではっきりと示されてしまったことに憤慨しているのです。

厳しくなる一方の出版業界を、最前線で支え、盛り上げ、互いに手を取り合っていこうという姿勢でいたのにこのあっさりとしたくら替え。

 

人気が出るということは、そういうことなのでしょうか。

 

現在、全国各地の書店が続々と消えているといわれています。

地方の小さな書店だけでなく、都会の大きな書店も惜しまれつつ閉店することになったというニュースをよく見ます。

 

そんな時代である今、人気シリーズの新刊本を書店で売らない、ということがどういうことかは、ポプラ社の方も重々承知なのでしょう。

販売先を拡げる、という意味もあるでしょうし、この業界の現状に限界を感じた上での行動なのかもしれません。

ポプラ社は超がつくほどの大手出版社ですが、それでも生き残るためには必死なのでしょう。

そして、書籍の販売にも力を入れているセブンイレブンと、その両者にとって好都合だったのが今回の手法であり、書店は指をくわえていることしかできないのが、なんともいえないかなしさと寂しさを感じさせます。

 

リアル書店はこれからどうなってしまうのでしょうか。

 

今回のおしりたんていのようなことが、今後も、他の出版社でも普通のこととなってしまうのでしょうか。

リアル書店にはリアル書店のよさがある。

という言葉だけではもう、置いていかれてしまう時代なのかもしれません。

 

先日から、入場料を払う書店が話題となっていますが、そうした新しい形をした書店が増えていくような気がします。

付加価値を備えた書店でなければ生き残っていけない。

本が好きな人たちは、そんなに特殊なことを求めてはいないと思うのですが……。

 

『おしりたんてい』の新刊本のセブン-イレブン先行販売の話が、出版業界を悪い方向へ導かないことを願って。

皆さまのご意見もお待ちしています。

じゃあどうすればいいのか、といった発展的、生産的なご意見も大歓迎です!

大きなうねりとなって、出版社や書店に届きますように!

そして、出版業界が少しでも上向きになりますように!

 

それではまた。