一年生のクラスが図書の時間で来ていて、ひとりの女の子がページが取れてしまっている本を持ってカウンターに来た。
修理用のテープを貼っているのをじーっと見つめている女の子。
緊張するので、あんまり見ないでほしい。
こういうの、書店で働いていた時に味わった、ラッピングしているところを凝視されるあの感じを思い出す。
そういう業務をしたことのある人ならわかると思うけど、あのプレッシャーってなかなかすごい。
ただでさえ、ラッピングは苦手だったのに。
本の修理の方がずっと楽といえば楽なんだけども、それでも、食い入るように見つめている子どもの前でやるのはちょっとだけ緊張する。
しかし、なかなかいい感じに。
「きれいにはるね」
女の子が言うので、「ありがと」と返すと、うれしそうに本を受け取って自分の席に戻っていた。
しばらくすると、べつの子がまたページが取れてしまった本を持ってカウンターにやって来た。
なぜだかそこには、先ほどの女の子も。
同じように、彼女たちの目の前で、本に修理用のテープを貼る。
すると、さっきの子が、
「先生ってね、きびしく、きれいにはるんだよ」
と、もうひとりの女の子に教えるように言った。
「そうなの?」
もうひとりの女の子が、さっきよりもじいっと本を見つめる。
さらなるプレッシャーにも負けず、なんとかきれいにテープを貼り終えることができた。
「ほら。でも、図書館の先生だもんね」
「図書館の先生ならこれくらいできないとね」
調子に乗ってそう言ったけど、時々は失敗もする。
「わたし、図書館の先生にはなりたくない」
「どうして?」
「だって、そんなにきれいにテープはれないもん」
にこにこしながら、女の子たちはカウンターから去っていった。
まどの外に目をやると、雪が降っていた。
ジャンパーを着た六年生の男子たちが、校庭で雪を投げ合ったり、雪だるまを作ろうとしたりしているのが見える。
クラスのほかの子たちはどうしたんだろう?
外に出たい子は出て、ほかの子は読書をしていてもいいよ、とか、そんな時間だったんだろうか。
いつもより音のしない一時間目の図書館のできごと。
それではまた。