本棚のすき間

絵本や小説、図書館についてなど、本全般について書いています。

笑われたい男子の悲しい性について

その日は冬の行事で、5・6年生が学校にいない日でした。

給食を食べ終わって、図書館にもどると、ひとりの図書委員の男子がカウンターのいすに座っていました。

上も下も迷彩柄の服を着ていて、同じクラスの子に「自衛隊みたい」となかなか上手いこと表現されているクリボーズくんです。

 

「あれ、○○ちゃんと△△ちゃん(ふたりとも図書委員)は?」

クリボーズくんがききました。

「見てないよ」

「おっかしいなあ。先行くって言って出てったのに」

 

その後、廊下から足音が聞こえると、クリボーズくんは急いでカウンターのかげにかくれました。

その俊敏な姿たるや、まさに自衛隊員のごとし。

女の子たちがドアを開けて入ってくると、ひとりの女の子はこっちがびっくりするくらいのおすまし顔でクリボーズくんをスルーしていきました。

そして、もうひとりの女の子は、

「ぎゃあっ!」

というさけび声を上げ、泣き笑いの表情でクリボーズくんからにげてきました。

 

「もう何回もやられてるから」

おすましガールは経験者だったのですね。

「最初のころはびっくりしてたのにね」

クリボーズくんが残念そうに言うと、おどろかされた女の子が、

「おんなじだったんじゃん!」

と怒ったように言いました。

 

その光景は、もう子ども時代からはすっかり遠い場所に来てしまった自分からは、まぶしいくらいきらきらしたものに見えました。

でも、どこか懐かしくて、泣きたくなるような。

 

男子って、なんでこう、どうしようもなくアホなんでしょう。

いや、女子だってアホなことはたくさんするでしょうけども、それにしたって男子のアホっぷりというのは、見ていてほほ笑ましかったり呆れてしまうくらいだったり。

 

もう、好きなだけやってて、という気もちにならないでもないのですが、ある意味、応援したい部分もあったりします。

 

それは、そこにある、女子を笑わせたい、という思いが伝わってくるからです。

男子は女子を笑わせたい生きもの。

女子だって、男子を笑わせたいという気もちはあるでしょうけど、男子ほどの捨て身感や貪欲さはなかなか表に出てこないようです。

 

話を図書館にもどしますと、

気がつくと、クリボーズくんはカウンターの外で、床にねそべってなにやらいもむしのようにもぞもぞと動いていました。

 

「なにしてるの? 服、汚れるよ」

私がそう言うと、クリボーズくんは、

「床掃除してんの」

とこたえました。

 

女子たちはくすくす笑っていました。

「きれいな迷彩服が汚れちゃうよ」

「いいの。よごれたって」

 

こういうのって、男子の性なのでしょうか。

それとも、このクリボーズくん特有のもの?

 

 

小学生の頃、私は突飛な行動をして、クラスメイトたちの気を引きたいという気もちがどちらかといえば強いタイプの子どもでした。

 

休み時間になると、よく机につっぷして眠っているふりをしていました。

小学生なので、眠っている子がいたらそっとしておいてあげようなどというやさしさはありません。

必ずだれかがかまってくれるのです。

 

要するに私はかまってちゃんだったのでしょう。

机の周りに友だちが数人集まってきているのを全身で感じながら、それでも、あくまでも眠っているというポーズをとります。

 

「えー、寝てるの?」

「いや、絶対起きてるでしょ」

「あっ、そのペン貸して」

半そでのうでにくすぐったいようなかゆいような感触が走って、それでもがまんします。

「いま動いた! ぴくぴくしてたよ」

「起きてるでしょぜったい」

うでを持ち上げて、ぶらんぶらんされたり、えんぴつのうしろでくびをつんつんされたり。

 

耐えきれなくなったところで、ようやく、眠そうな顔をして起きました。

「起きてたでしょ!」

「いや、寝てたよ」

「うで、うで」

「なにこれ!」

「えー、気づいてなかったの?」

 

思い出していたら、何してんのばかじゃないのという切ない気もちになってきました。

そういう、大人からみたらわけのわからないことをして、でも、そこにはなんらかの理由があるということを思い出したのです。

 

川島誠さんの小説に『笑われたい』という短編があります。

『夏のこどもたち』という文庫に収録されているのですが、これに出てくるケンジという中学生の男子が、まさに、その連続で。

夏のこどもたち (角川文庫)

夏のこどもたち (角川文庫)

 

周りからは全く理解されないような行動ばかりとって、でも、そこにはちゃんと彼なりの理由があるのです。

彼が彼として生きていくための、切実な訳が。

 

小学生男子のアホな行動を見られるのもあと二か月弱かと思うと切ないですね。

 

クリボーズくんの全身床拭きを見ていたら、いろいろなことを思い出したという話でした。

ありがとう、クリボーズくん。

 

 

それではまた。