『シニガミさん』
『シニガミさん』
宮西達也:作
えほんの社
あらすじ
「だれでも、じぶんが生まれた日、たんじょうびはしっています。
でも、じぶんが死ぬ日をしっているひとは、だれもいません。
それがわかるのは、その日をきめるのは、わたくし、シニガミでございます」
シニガミのそばで、くるしそうにたおれているコブタがいました。
「あのコブタ、かわいそうですが、あとなん日かで死んでしまいます」
そこに、はらぺこのオオカミがやって来ました。
「なにかうまいものたべたいな……。でもこんなところにおいしそうなコブタなんているわけないし……」
そう言って、オオカミがふり返ると……
「い、いたーーーー!」
オオカミはコブタにかぶりつこうとしましたが、
「ふぅー……」
コブタは、くるしそうないきをしています。
「こ、こいつ、びょうきか。うまそうだけど、びょうきじゃなぁ……そうだ、こいつが元気になったらくってやる!」
そう言って、オオカミはコブタをかかえて家にかえっていきました。
「そうそう、あのオオカミも、あとなん日かで死んでしまいます……」
オオカミは家につくと、じぶんのベッドにコブタをねかせ、ふかふかのおふとんをかけてやりました。
じぶんは、かたいゆかにごろっと、なにもかけずにねむりました。
そんなふたりを、シニガミはじっとみていました。
オオカミはいっしょうけんめいコブタのかんびょうをしました。
でも、コブタのびょうきはぜんぜんよくなりません。
ある日、コブタのためにのはらで花をつんでいると、オオカミはおじいちゃんが言っていたあることを思い出しました。
そのあることとは……。
感想
おはなしは、死をむかえるその日をしっているというシニガミさんの、ちょっと不気味な語りから始まります。
死にそうなコブタをいまは食べずに、元気になったら食べようとオオカミはコブタを連れて帰るわけなんですが、じぶんのベッドにコブタを寝かせるという時点で、このオオカミのやさしさに気がつきます。
その後のオオカミの看病の仕方も、私が大人でちょっと最近涙もろくなってきたせいでしょうか、なぜだか胸にきました。
あたたかいコーンスープを作ってあげたり、へんてこな歌をうたいながら、おかしなおどりを見せて「おまえもはやくげんきになって、うたっておどろうぜ」と言ったり。
いつの間にか、オオカミは本気でコブタに元気になってほしいと思うようになっているのです。
そう書かれているわけではないのですが、読んでいればそれが自然と伝わってくる。
そしてそれがとても自然な感じで、人間が本来持っているやさしさというものをひしひしと感じさせます。
そんなオオカミがコブタに対して声を荒げる場面があるのですが、ここが一番の泣きどころであり、また、それと同時に笑いどころでもありました。
本当に、いろいろな美しいものが詰まっている一冊だと思います。
やさしさや、大切なひとのために使う勇気、あきらめない心。
しかも、ちっとも押しつけがましくなくって、読んでいて楽しい。
素晴らしい絵本だと思います。
続編『シニガミさん2』もあるので、そちらも次回紹介します。
それではまた。