本棚のすき間

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【百人一首】を第一首から学ぶ(3・4)

百人一首を第一首から学ぶ(3・4)

 

 

あしびきの 山鳥の尾の しだり尾の ながながし夜を ひとりかも寝む

柿本人丸

 

山鳥の、長く長くたれ下がった尾のように、長い長い夜を、わたしはひとりさびしくねむるのでしょうか。

 

 

柿本人丸は日本最古の歌集『万葉集』を代表する歌人。

柿本人丸の名前は、時代や歌集によって表記が違います。

『万葉集』では「人麻呂」、平安時代は「人麿」、百人一首では「人丸」と書かれているのが一般的。

 

解説

「あしびきの」は、山関連の言葉にかかる枕詞。

ここでは山鳥にかかっています。

 

キジ科の山鳥は、オスの尾が非常に長く、個体によっては90センチにも及ぶことで知られています。

そのために、古来より和歌で、「長いもの」を示す表現に用いられるようになりました。

 

それに続く「しだり尾」も「下に垂れるような尾」を意味する語。

似たモチーフをくり返すことによって、長さを強調しています。

 

ここまでがこの歌の序詞。

以下「ながながし夜」に繋がっていきます。

 

 

この歌は、秋の夜長をひとりで過ごす寂しさを嘆いたものです。

題材となった山鳥には「長いもの」のほかに「ひとりで寝る」という意味も含まれています。

それは、山鳥のつがいは昼間は一緒にいるけれど、夜になるとオスとメスが谷を隔てて別々に寝るという伝承からきているのです。

 

最後に「ひとりかも寝む」とあることで独り寝をより強調し、孤独と寂しさを印象的に演出している効果があります。

 

 

田子の浦に 打ち出でて見れば 白妙の 富士の高嶺に 雪は降りつつ

山辺赤人

 

田子の浦へ出かけて、遠くをながめてみると、真っ白な雪をかぶった富士山が見え、その頂上には、今も雪が降り続いています。

 

 

山辺赤人は三十六歌仙のひとり。

柿本人丸と同様、『万葉集』を代表する歌人で、ふたりを合わせて「山柿(さんし)」と呼ばれ、尊敬されていました。

 

 

解説

田子の浦は、駿河湾の西海岸一帯を指しています。

静岡県富士市を流れる富士川の河口付近にあたり、北に富士山を望む景勝地として、昔から知られていたそうです。

 

「うち出でてみれば」で「出る」+「見る」の確定已然形となるので、「出て見てみると」という意味になります。

 

「白妙」とはコウゾ類の樹皮から取った繊維で織った白い布のこと。

そこから、雪、波、雲などの枕詞となりました。

 

田子の浦から富士山を見れば、山頂にしんしんと雪が降り積もっています。

幻想的な美しさに満ちた歌です。

超訳マンガ 百人一首物語 花の色の巻

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