百人一首を第一首から学ぶ(19・20)
19首目
難波潟 短き葦の ふしの間も 逢はでこの世を 過ぐしてよとや
伊勢
訳
難波潟に生える葦の節のように短い時間さえ、あなたに逢わないままでこの世を過ごせというのですか?
伊勢は872年頃生~938年没。
三十六歌仙、女房三十六歌仙のひとり。
藤原仲平、時平兄弟など、多くの公達と浮き名を流しました。
宇多天皇の皇子・敦慶親王と結婚。
解説
作者の伊勢は、恋多き女性として有名でした。
また、宇多天皇の寵愛を受けて皇子を産んでいます(皇子は早世)。
この歌では、まず難波潟の葦が登場します。
葦の節は「短い時間」を示す定番の暗喩です。
「逢はで」は「逢わないで」という意味で、「この世」は人生、男女の仲、世間などの複数の意味を含んでいます。
「過ぐしてよ」は「過ごしてしまえ」という命令に近い意味合いで、末尾の「とや」は「そう言うのか?」という問いかけです。
つなげてみると、「逢わないままで過ごせと、あなたはそう言うのか?」と相手を強く非難している語調ととらえることができます。
仲がこじれてしまい、少しの間も会いに来てくれなくなった恋人への抗議として詠まれた歌だといいますが、その嘆き方のスケールの大きさがなんとも恋多き伊勢らしいです。
ちなみに、伊勢が結婚した敦慶親王は、光源氏のモデルのひとりともいわれる、容姿端麗で琴や弓に秀でていた麗人です。
20首目
詫びぬれば 今はた同じ 難波なる みをつくしても 逢はむとぞ思ふ
元良親王
訳
こんなに思いわずらっているくらいなら、どうなっても同じこと。
身を滅ぼしてもあなたに会いたい。
元良親王は890年生~943年没。
陽成天皇の第一皇子。
『大和物語』に風流好色な逸話が残っています。
解説
この歌は、作者である元良親王が、時の権力者・藤原時平の娘で、宇多天皇の愛妃だった京極御息所との不倫が発覚した際に詠んだものとされています。
冒頭の「詫び」は動詞「わぶ」の連用形で「想いわずらい悩む」という意味になります。
行き詰った気持ち、というのがここに表されています。
しかし、その直後には「今はた同じ」、つまり、「今となっては同じことだ」と開き直りともとれる一言があります。
これは「バレてしまったからにはもうどうにでもなれ」という心情ですが、自暴自棄な感情というわけでもないようです。
というのも、後半「それならば自分の身がどうなろうとも、あなたに会いたい」という一層激しい恋愛感情に向けられているのがわかるからです。
「みをつくし」は船の道しるべとして海に立てられた杭のことですが、「身をつくす(身をほろぼす)」の意味もかかっている掛詞です。
ちなみに19首目の伊勢は恋多き女性として有名でしたが、この元良親王は「一夜めぐりの君」と呼ばれたほど、気が多い男だったそうです。
三十人以上の女性と関係を持ったともいわれています。

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