以前に、マツコの知らない世界という番組で「読み聞かせ絵本」の特集がありました。
その際、絵本を選ぶのに数が多すぎてストレス、という話が。
たしかに、絵本は昔ながらのベストセラーから新刊まで、また、さまざまなタイプの絵本が出版されています。
購入する、となると、なかなか冒険できない金額のものも多いです。
文庫本2~3冊は買えてしまいますもんね。
そこで、今回は、「楽しい・笑える」がつまった絵本をまとめてみました。
子どもとげらげら笑いながら絵本を読みたい。
そんな気分の時におすすめの絵本10選を紹介していきます。
子どもと一緒に笑いたい時におすすめの絵本10選
『そらからぼふ~ん』
高畠那生:作
くもん出版
あらすじ
そらからぼふ~んと、なにかがおちてきた。
いってみると、そこにはいいにおいのする巨大なものが……。
さらにもうひとつ、ぼぼーん! とおちてきた!
それは、ホットケーキ。
そしてこんどは、バターもかわいらしい音を立てながらおちてきた。
つぎはいったい、なにがおちてくる?
そして、このホットケーキ、きみなら、どうする?
感想
あらすじにしてしまうとそんな話なんすが、とにかく、シュールのひと言に尽きます。
圧倒的なシュールさにいろいろがもうどうでもよくなってきます。
でもそれがいい。とっても楽しいんです。
はちゃめちゃなことが起きると、子どもたちは喜びます。
探偵の顔がおしりだったり、おならで音楽を奏でたり、そういう、大人になりすぎた大人には理解できないようなことで、げらげら笑うのが子ども。
この絵本も、最初から最後まではちゃめちゃなことばかりが続きます。
子どもはもちろん、大人も、たまにはなにも考えずにページをめくって、ただただそのおかしさに声をあげて笑っていられるような絵本を読む、というのもいいのではないでしょうか。
肩の力が抜ける一冊。
『まないたにりょうりをあげないこと』
シゲタサヤカ:作
講談社
あらすじ
ある日、ひとりのコックが大変なものを目撃してしまった。
それは、まないたがエビを食べる瞬間……!
おどろきの声をあげても、だれも相手にしない。
それもそのはず、そこは町で一番人気のレストランなのだから。
みせじまいをしたあとで、コックはもう一度、まないたの上にえびを置いてみた。
すると……ムシャリ!
まないたの上の食材を、よくこっそり食べているのだとまないたは白状する。
さらに、このレストランの料理を食べてみたい、とコックにお願いまでする始末。
次の日から、コックはみんなの目をぬすんでは、まないたに料理を少しずつ食べさせてあげるように。
でも、そのうちにまないたの様子が変わっていき……。
まないたはいったいどうなってしまうのか。
そして、すべてがバレてしまったとき、コックはどうするのか。
感想
遠くからでも見やすく、わかりやすい絵のタッチがいいですね。
どこかにページの切れ端が落ちていたとしても、シゲタサヤカさんの本だって、すぐにわかるような。
読み聞かせをするときには、こういうのが意外と大事だと思います。
細かい描きこみや遊び心が多いのは、手にとって読んでもらいたい本。
それから、物語もわかりやすいです。
それに、なにより、おもしろい。
まないたが食べものを食べたらどうなっちゃうんだろう、と思ったことがあるひともないひとも、みんなが楽しめるストーリーになっています。
想像がふくらみ、現実の世界を見る目に「楽しさ」が加わるかもしれない絵本。
じぶんが料理をしているまないたが、もしも、見ていないすきに食材を食べていたら、って、考えるだけで楽しくなってきます。
絵本においては、楽しい、ということはやっぱり一番大切だと思うのです。
絵本に限らず、かもしれないですがね。
『でんごんでーす』
マック・バーネット:文 ジェン・カラーチー:絵 林木林:訳
講談社
あらすじ
「そろそろばんごはんだからかえっておいで」
と、ピーターに伝えてくれないかしら、と言われた赤い鳥。
でも、次の鳥に伝言するときに、どういうわけか、
「そろそろばんごはんだから、ホームランをうって、はやくかえっておいで、だって」
と言ってしまった。
それを聞いた次の鳥は、さらにその先にいる鳥に、また伝言をする。
けれど、今度もまた、さっきとは違った伝言となってしまい……。
果たしておかあさんの伝言は、ピーターの元に届くのか?
そしてその内容は?
感想
個性豊かな鳥たちが、元気いっぱいに伝言を間違える、楽しい絵本。
伝言ゲームって、いつの間にかちょっとずつ違っていて、っていうものだけど、この鳥たちはちょっとどころかまったく合っていません。
でも、それが面白いんです。
読み聞かせをしたことがあるんですが、子どもたちが聞きながら「えーっ、全然違う!」ってさけんじゃうのがよくわかります。
伝言の間違え方も少しずつ大げさになっていくので、だんだん盛り上がっていく、という形が自然とできていきます。
でも、最後には意外な結末が待っていて、それも、子どもたちがいい反応をしてくれます。
いろんな鳥たちのセリフをどう読むかで、テンションが変わってくる絵本。
『あしにょきにょき』
深見春夫:作
岩崎書店
あらすじ
まいにちおいしいごちそうをたべていたポコおじさんは、なにかもっとめずらしいものをたべてみたいと思っていました。
するとある日一人の男のひとがたずねてきて、そらまめをもってきました。
そのそらまめは、見たことがないくらい大きなそらまめで、おどろいたポコさんはすぐにそのそらまめを買うことにしました。
さっそく、そらまめをにて、食べてみると……!?
なんと、ポコおじさんのひだりあしがにょきにょきのびはじめました!
おどろくポコさんをよそに、あしは、家をとびだしてどんどこのびていきます。
林をぬけて、どんどこ。
はしをわたって、どんどこ。
町のひとたちは巨大な足におおよわりです。
ポコおじさんの左足はどうなってしまうのでしょうか。
感想
「えー、どうなっちゃうの?」という楽しさで、どんどこ読みすすめたくなる絵本です。
お話のリズムがよくって、あっという間に終わってしまう感覚ですが、それでも、意外な解決策ににっこりさせられます。
考えさせられる、とかいう要素は一切ありません。
ただ、ひたすらおどろいて、笑って、心配して、ほっとする。
肩の力を抜いて読める一冊です。
『キャベツがたべたいのです』
シゲタサヤカ:作
教育画劇
あらすじ
たくさんのチョウチョたちが、花のみつをおいしそうにすっています。
でも、その様子をかげでおもしろくなさそうに見ているものがいました。
それも、チョウチョたちです。
でも、こっちのチョウチョたちが夢みているのは花のみつなんかじゃありません。
「あいつらは、わすれちまったのか? あのあじを」
そう、彼らの願いはひとつでした。
「キャベツがたべたい!」
そんなチョウチョたちがやおやにやってきました。
さっそく、キャベツを食べようとしますが……
こまったことに、どうにもこうにもかじることができません。
やおやのおじさんはチョウチョたちのなげきをきくと、「それならおれにまかしとけ!」と言って、キャベツをしぼったキャベツジュースをつくってくれました。
ストローみたいな口で、チョウチョたちはのんでみます。
でも、なにかが違う……。
あのかじったキャベツの味とは、どうしても違うのです。
そこで、やおやのおじさんはやまぶどうやオレンジ、やまいもやにんじんなどを混ぜてしぼった、特製のジュースをつくってくれました。
チューチュー、とそれをすいあげてのんでみると、チョウチョたちはなんと、やおやのおじさんの姿になってしまいました……!
チョウチョたちはいったい、どうなってしまうのでしょうか。
感想
シゲタサヤカさんの独特な世界観が爆発している絵本です。
以前紹介した
ではまないたが主役でしたが、今回はチョウチョ。
それも、幼虫だったころに食べていたキャベツの味がどうしても忘れられない、という、ちょっぴり異端な彼らです。
キャベツを求めてやおやに行って、いろいろ上手くいかないことがあって、というところまでは素人でも考えつきそうですが、特製ジュースをのんだあとあたりから、シゲタさんにしか描けないお話になっています。
ひたすら楽しい絵本です。
この世界観にハマると、抜け出せなくなりますよ……。
『もうぬげない』
ヨシタケシンスケ:作
ブロンズ新社
あらすじ
ぼくのふくがひっかかってぬげなくなって、もうどのくらいたったかしら。
おかあさんが「おフロにはいろう」なんていうから。
「じぶんでぬぐ!」っていったのに、おかあさんがいそいでぬがそうとするから。
いろいろやってみたけれど、ちっともぬげない。
このままだったらどうしよう。
……でも、なんとかなりそうなきもする。
のどがかわいたらどうしよう……。
ネコのミータがおなかをコチョコチョしてきたらどうしよう……。
アイデアしだいで、どうにかなるよ。
感想
今、一番人気のある絵本作家と言っても過言ではない、ヨシタケシンスケさんのとってもかわいい絵本です。
シンプルな絵にシュールな展開。
服が引っかかってぬげなくなったことがある、世の中のほとんどすべてのひとに伝わるであろう、この面白さ。
ヨシタケシンスケさんの他の絵本『りんごかもしれない』や『ふまんがあります』等もまたどこかで紹介したいと思っているのだけど、あちらはわりと言葉数が多くて、ものすごく面白いのに読み聞かせをするにはちょっと大変なところがある。
この『もうぬげない』は、その点、文章がかなり短いので、ちょっとした時間の読み聞かせにはもってこいの作品。
しかも、図書の時間に読み聞かせをすれば、たいてい、笑いが起きてほしいところでちゃんと笑いが起きる。
それって、かなりすごいことだと思う。
読み聞かせのボランティアをしてくださっていた保護者の方にこれをおすすめしたときも、一読し、気に入ってくださった。
かわいすぎる……!
とおっしゃっていた。
お母さんから見ても、子どものこういう姿はきっと子育てあるあるなのだろうし、その思考がまたTHE子どもという感じで、親の心をくすぐるのかもしれない。
子どもも楽しく読めて、親もほっこりする絵本。
素晴らしいのひと言。
『どじにんじゃ』
新井洋行
講談社
あらすじ
とらわれたひめをたすけに、かげまるは、にんぽうむささびのじゅつで、そらをひゅーんととんでいきます。
でも、風がつよい日はつかうべからず。
しかたがないので、こんどはにんぽうすいとんのじゅつで。
これで、みずのなかでもすーはーいきができます。
でも、さめがいる場所ではつかうべからず。
しかし、なんでここにさめが?
ならばとこんどはにんぽうみずぐものじゅつ。
みずのうえをすたたたーと歩いていきます。
でも、このじゅつも、さめがいる場所では……
あやういところでなんをのがれたかげまるたちは、ひめのいる天守閣へ。
でも、そこでもうまくいかないもので……
感想
ひめをたすけるためにいろんな術を使うかげまる。
でも、ちょっぴりドジなかげまるは、どの術もしっぱい。
そんなかげまるにふくろうの師匠(?)がいろいろとアドバイスをしてくれるんですが、どれも言うのが遅くて、アドバイスの意味ないじゃん! と突っ込みたくなります。
かげまるはなにが起きてもポーカーフェイス。
まったく動じません。
それもなんだか可笑しい。
最後には子どもたちが大好きなあれが……。
低学年に、特におすすめ。
さらっと読めるにんじゃ絵本です。
『いっぺんやってみたかってん』
はっとりひろき:作
講談社
あらすじ
きょうはあめふり。
せやから、こうえんにはだ~れもおりまへん。
すなばから、すなくんがでてきて、
「なーなー。だ~れもおらへんし、ぶらんこくん、いっぺんあそばせてや~」
と言いました。
「ええけど、できんの?」
ブランコくんにきかれて、すなくんは、
「だいじょうぶだいじょうぶ。ほな、いくでー」
とブランコくんにのりました。
「ひゃっほー!!」
あめふりやから、砂もかたまっているとすなくんは言いますが、
ところどころすながとびちっています。
そこにやってきたすべりだいくん。
「え~な~。ぼくもやってみたいわ~」
「すべりだいくんはからだ大きいし、ちとむりとちがう?」
「できるできる。ほな、いくでー」
「うおおおおおおー!!」
「ちょっと、くるしいって。むちゃくちゃやん」
すべりだいくんはいったい、どんな風になってしまったのでしょうか?
三人はそのあと、すべりだいくんで遊んだり、すなくんであなほり大会をしたり、かくれんぼやおにごっこをしたりしました。
彼らは、それぞれの遊びを楽しめるのでしょうか?
感想
めちゃくちゃではちゃめちゃで、笑いどころ満載の絵本です。
関西弁で、テンポよく、漫才でも見ているかのようにボケとツッコミが入ってきます。
すべり台がブランコにのるなんて、は? と思うじゃないですか。
それで、は? と思いながらページをめくると、思った以上に大変なことに、というかわけのわからないことになっているんです。
すなくんがすべり台で遊ぶ、というのは、まあ、百歩譲ってわからなくもないんですが、ブランコくんがすべり台で遊ぶとなると……
どうなってるのこれ? じっくり絵を見ざるをえなくさせられます。
どの遊びも、遊具たちにかかれば既存のやり方楽しみ方をぶち壊してくれるのだということを教えてくれました。
以前書いた絵本の紹介記事で
持ち主がねむっている間に、文房具たちが夜中にひっそりと会議をするという話があったんですが、それとは読み味が真逆でした。
読み聞かせで、笑いが起こってほしい時にはおすすめです。
高学年でも、こういうギャグ系が好きな子もいるとは思うのですが、どちらかと言えば低学年向けなのかなと思います。
関西弁の方の本気の読み聞かせを一度聞いてみたい。
そんな一冊でした。
『ぼくらはうまいもんフライヤーズ』
岡田よしたか:作
ブロンズ新社
あらすじ
オニオンリングとフライドチキンが空き地であそんでいたら、エビフライとアジフライが、リヤカーをひいてきました。
「おーい、やきゅうやれへんか」
「ええー、やきゅう!」
「となりまちのれんちゅうが、しあいしたいゆうとんねん」
そら、おもしろい、ということで、メンバー集めをすることになりました。
そこにやって来たのは、イカリング。
でも、トンネルばかりで、ボールをキャッチすることができません。
こんどは、フライドポテト5人ぐみがやってきました。
そして、むりやりグローブの中に入り、ボールをナイスキャッチ!
次にやって来たのはコロッケです。
コロッケはボールをからだで受けとめました。
「ちょっといたいけど、ぼく、こんじょうあるから」
その後、頼みこんできたたいやきとたこやきをフライにしてチームに入れてあげると、いよいよ、練習がはじまりました。
はたして、上手くいくのでしょうか?
感想
岡田よしたかさんお得意の笑いどころ満載のギャグ絵本です。
もう、表紙を見ただけで、面白いってわかるようなのって、その場に出ていただけで笑いが起きそうな予感がばりばりする実力派の芸人みたい。
冒頭の、オニオンリングットフライドチキンが空き地で遊んでいたら~、という1ページで、すでに読み手はツッコむことをあきらめ、このはちゃめちゃな世界観に身をゆだねることになるでしょう。
いろいろとめちゃくちゃなのに、たいやきとたこやきが来たら、
「きみらはフライじゃないから入れへん」
と、急に論理的なことを言いはじめるおかしさ。
そして、フライなべがチームの監督をつとめることになるのですが、これがちょっと唐突だなあ、と思ったんですよ。
(最初から最後まで、全部唐突ですが)
でも、ラストで対戦相手が出てきたところで、なんだかとても腑に落ちました。
ひと波乱ありそうな予感がぷんぷんします。
ちなみに、試合の様子は描かれていません。
ぜひ、続編で読んでみたいです。
最後にクイズなんですが、うまいもんフライヤーズの彼らがボールを打つと、どんな当たりになるでしょう……?
答え合わせは、ぜひ、絵本の中でしてみてください。
『オニのきもだめし』
岡田よしたか:作
小学館
あらすじ
ふたりのオニがよみちをあるいておりました。
「あーあ、えらいおそなってしもたなあ」
「もっとはよでんしゃにのったらよかったなあ」
なんだかおばけがでそうだと、オニたちはびくびくしながらくらい道をあるいていきます。
しばらくいくと、
ヒュルヒュルヒュル~~
「うわっなんかとんできよったで」
「ごぶさたしてます~ひとだまですう~」
「ごぶさたしてへん。あうのんはじめてや」
さらに、
「まいど~」
「なんやきみは」
「ゆうれいどす」
「せやからよなかにこんなみちいくのんいややねん」
「あー、もういややなあ。まわり、おはかやし」
「なんか、あっちからポキポキおときこえるで」
「まいど~がいこつだす」
「うわー、またでたまたでた」
その後もオニたちの前にさまざまなおばけが現れ……
感想
関西弁のオニという時点でなんだか滑稽な感じがする上に、このオニたち、じぶんたちがこわがられる存在のはずなのに、とてもこわがりなんです。
情けない表情で、夜道を歩いていくシーンで、もう笑えてきます。
出てくるおばけたちも関西弁で、とっても明るいので読んでいる側としてはちっともこわくないんですが、オニたちはびくびく。
「まいど~」なんて言って出てくるんですよ、ゆうれいが。
ただおばけが出てきてびくびくするばかりのくり返しから、途中で、オニが逆におばけたちをこわがらせようと作戦を立てるのも可笑しかったです。
しかもその手段が、オニだからそんなことしなくてもいいのでは……? というようなやり方で、さらにはその作戦の結果がまた面白いんです。
ラストはふたりのオニがあまりのこわさに……書いてしまうとつまらないので、ぜひ読んでお確かめください。
あー、面白かった! と言って閉じたくなる、そんな絵本でした。
まとめ
10作に絞らせていただきましたが、楽しい・笑える絵本はほかにもたくさんあります。
いそがしい大人も、読むのに時間のかからない絵本を子どもといっしょに開いて、げらげら笑っていただけたらと思います。
公共図書館の絵本コーナーも使って、ぜひ、子どもといっしょに絵本を楽しんでいただけたら幸いです。
それではまた。