本棚のすき間

絵本や小説、図書館についてなど、本全般について書いています。

【百人一首】を第一首から学ぶ(29・30)

百人一首を第一首から学ぶ(29・30)

 

29首目

心あてに 折らばや折らむ 初霜の 置きまどはせる 白菊の花

凡河内躬恒

 

手折るならば、当て推量で手折ってみようか。

初霜が降りて、白菊と見分けがつかなくなっているのだから。

 

 

凡河内躬恒は859年頃から925年頃没。

卑官(下級役人)だったが、歌人としては名高かった。

三十六歌仙のひとり。

 

 

解説

「初霜」はその年、最初に降る霜です。

霜が降りてまっ白になり、白菊の花が埋もれてしまった。

そんな晩秋の朝の光景が浮かぶ和歌です。

 

大仰な表現とも言えますが、二つのものが一体化して感じられるほど、まじりけのないまぶしい白さであったことがはっきりと伝わってきます。

 

躬恒の歌づくりは早業で、醍醐天皇と歌で会話をしたほどとも言われています。

 

ちなみに、奈良時代から、菊は体によい植物とされていました。

後鳥羽院のお気に入りで、のちに皇室の紋章にもなりました。

 

 

 

30首目

有明の つれなく見えし 別れより 暁ばかり 憂きものはなし

壬生忠岑

 

有明の月が冷たく光っていたあなたとの別れの日以来、私にとって夜明け前ほど憂鬱な時間はない。

 

 

壬生忠岑は860年生~920年没。

『古今集』の撰者のひとりで、三十六歌仙にも選ばれています。

 

 

解説

この歌は、読み手によって解釈が大きく異なると言われています。

まずは、男がつれなく感じたのが「有明の月」なのか「女の態度」なのかという点です。

出典の『古今集』では、つれなかったのは「相手の女性の心」として、振られた作者の心境を詠んだものと解釈されています。

権中納言定家は「有明の月」とし、逢瀬のあとの別れを惜しむ男心とロマンチックな解釈をしています。

現在では、その両方である、という解釈が一般的となっています。

 

有明とは、空に月が残ったまま夜が明けること、あるいは、その時間帯を指します。

この時間の別れといえば、一夜をともにした男女の別れと解釈するのが和歌の常識です。

 

この時、男女の間に何があったのかはわかりませんが、この時間帯ほど「憂きものはなし(憂鬱なことはない)」とあるので、よほど深い傷を負うような何かがあったのでしょう。

 

いつもは美しいと感じる夜空の月ですら、意中の相手から無下にされた夜には薄情な存在に見えてしまう、そんな感覚が詠われています。

 

有明の月は夜明け前に空に残っている月のことを指しますが、深夜に夜空で輝いている月のことは「夜半(よわ)の月」と言います。

ちはやふる-上の句-

ちはやふる-上の句-