本棚のすき間

絵本や小説、図書館についてなど、本全般について書いています。

【百人一首】を第一首から学ぶ(37・38)

百人一首を第一首から学ぶ(37・38)

 

37首目

白露に 風の吹きしく 秋の野は つらぬきとめぬ 玉ぞ散りける

文屋朝康

 

草の葉で光るつゆに、風が吹きつける秋の野は、留めていない真珠が散らばりふきとんでいるようだ。

 

 

解説

「白露」は、草の葉の上に白く光って見える露のことです。

日が昇れば消えてしまうので、露は「はかなきもの」の象徴でした。

「風の吹きしく」の「しく」は「頻く」で「しきりに~すること」の意味なので「風がしきりに吹く」となります。

 

「つらぬきとめぬ」は「ぬ」が打消しを表しているので「紐を通して留めていない」ということになります。

 

秋の朝、草の葉に光る白露。

きらきら輝く白露が風邪でざあっと揺れる様子を、紐で留めていない玉が散らばる様子に見立てて、その美しさに感動しているのです。

 

この歌の「玉」は真珠という説が強い。

『古事記』『日本書紀』の頃から真珠は貴いものとして扱われており、高貴な女性の象徴でもありました。

『万葉集』に登場する〈あわびだま〉は、アワビからとれる天然の真珠のことです。

 

この歌の「風」とは、野分という、台風にともなう秋の強い風のことを言っています。

 

 

文屋朝康は生没年不詳。

文屋康秀の息子です。

平安時代、多くの歌合に参加し、評判のよい歌人とされましたが、経歴等の詳細は不明。

 

 

 

38首目

忘らるる 身をば思はず 誓ひてし 人の命の 惜しくもあるかな

右近

 

忘れられる私は平気。

けれど、一生愛すると神に誓ったあの人が天罰で命を落とすのは惜しまれます。

 

 

解説

一生自分を愛すると神に誓った男の心変わりに対し、「天罰を受けて命を落とすであろうあなたが惜しまれます」と返すのです。

なんとも、相手を案じているともとれますし、強烈に皮肉っているとも解釈できる歌です。

平安時代の女性は儚いイメージもありますが、この歌からは強さというものも感じられます。

 

右近がこの歌で示している相手は、藤原敦忠ではないかと推測されています。

実際、敦忠は若くして亡くなっています。

天罰のせいかはわかりませんが、敦忠は、菅家に呪われている家系だったため、自分が早く死ぬことをわかっていたとも言われています。

 

 

右近は生没年不詳。

醍醐天皇の中宮・穏氏に仕え、村上帝時代の歌壇で活躍しました。

右近の名の由来は、父である藤原季縄が、右近衛少将だったことから。

『大和物語』には、その華やかな恋愛が掲載されています。

元良親王とも恋仲だったと言われています。

小学生おもしろ学習シリーズ まんが 百人一首大辞典

小学生おもしろ学習シリーズ まんが 百人一首大辞典