こんにちは。
今回は、クマをテーマにしたおすすめ絵本を紹介します。
現役学校司書がおすすめするクマの絵本3選!
1冊目
『ねむるまえにクマは』
フィリップ・C・ステッド:文 エリン・E・ステッド:絵 青山南:訳
光村教育図書

- 作者: フィリップ・C.ステッド,エリン・E.ステッド,Philip C. Stead,Erin E. Stead,青山南
- 出版社/メーカー: 光村教育図書
- 発売日: 2012/12/01
- メディア: 大型本
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あらすじ
冬が近づいてきて、ねむくなってきたクマでしたが、ねむるまえに、みんなに話したいことがありました。
そこにいたネズミに話しかけてみますが、ネズミは「木の実を集めておかなくちゃ」と、いそがしそうです。
クマはネズミといっしょに木の実をさがし、集めおわると、ネズミは「じゃあ、またね!」と言って、土の中にもぐっていきました。
森の中を歩いていくと、カモがいたのでまた話しかけました。
「南のほうへいかなくちゃ」とカモが言うので、クマは風向きをしらべてあげ、飛んでいくカモを見送りました。
カエルも、モグラも、クマの話をきいてはくれませんでした。
やがて冬が来て、雪がふりはじめます。
クマくんの話はだれかにきいてもらえるのでしょうか。
そして、その話したかったことというのは、なんだったのでしょう。
感想
秋から冬にかけての、しんとした空気感が伝わってくるようなしずかな絵本です。
だれでもいいから話をきいてほしい……! でもだれもきいてくれない。
そんなクマの哀愁が終始漂い、応援したくなってきます。
えんぴつや水彩絵の具で描いたような(違っていたらすみません)やさしいタッチの絵がたまりません。
生まれ変わったら、こんな風に絵を描いてみたいものです。
お話は冬を迎えたあとから、ゴールに向けて、少しずつ緊張を高めていきます。
どんな話をしてくれるんだろう。
みんなに話したかった話って、いったいどれだけ面白い話なんだろう。
そのふくらんだ期待に、作者は、ラストでとてもしっくりくるような、意外性たっぷりのような1ページでこたえてくれます。
じーんときました。
たしかに、それはみんなに話したくなる話かもしれないなあ、と。
冬が近づいてきた夜に、毛布にくるまって読みたい一冊です。
ちなみに作者は夫婦です。
夫婦でこんな素敵な絵本を作っているなんて、きっと素敵な夫婦に違いありません。
2冊目
2『おじゃまなクマのおいだしかた』
エリック・パインダー:作 ステファニー・グラエキン:絵 三辺律子:訳
岩崎書店
あらすじ
ある寒い日に、トーマスがクッションや毛布を集めて、あたたかできもちのいいほらあなをつくりました。
本を読もうと思ったけど、暗いので、懐中電灯をとりにいき、もどってみると、ほらあなの中に、なにかがいるようでした。
おおきいぞ!
トーマスはそっと中をのぞきこみました。
するとそこには、クマが……!
クマを追い出すために、ブルーベリーでクマをおびき出したり、きもちよさそうにまごの手で背中をかくところをみせつけたり、トーマスはいろいろな方法を試みます。
でも、クマはなかなか強敵です。
トーマスはクマをおいだすことができるのでしょうか。
そして、クマというのはほんとうにほんとうにクマなのでしょうか……?
感想
トーマスとクマの心理戦がとてもかわいくて、読んでいると自然に顔がにやけてくるような絵本です。
トーマスも純粋そのものだし、クマも負けじとかなりの無垢だし、どちらかを応援したいような、どちらも応援したくなるような、で、困ってしまいます。
最後にはちょっとしたどんでん返し(?)もあって、なあんだそうだったのか、という子どもたちの反応も楽しめます。
きっと、大人も、えー、そうだったの? と思うのではないでしょうか。
おわりのページには、4ステップでできるほらあなのつくり方も載っています。
子どもと寒い日にこの絵本を読んで、いっしょにほらあなをつくってぬくぬくしてみたくなりました。
3冊目
『クマと森のピアノ』
デイビッド・リッチフィールド:作 俵万智:訳
ポプラ社
あらすじ
森の中で「へんなもの」を見つけたブラウンは、おっかなびっくりそれにふれてみます。
すると、ぽろん、と音がします。
気になったブラウンは次の日も、その次の日も「へんなもの」をさわりにやって来て、やがて、なかよしになります。
森にやって来た親子にそれが「ピアノ」であることを教えてもらい、また、都会に行けばもっといろんな音楽を聴けるし、有名にもなれると言われ、ブラウンは迷います。
森の仲間たちはなんて言うだろう……。
でもブラウンは都会に行きました。
そして、またたく間に人気者になり、ホールでコンサートをするほどのピアニストになったのです。
でも、ブラウンは思いました。「なにかがちがう。なにかが足りない」と。
ブラウンは森に帰りました。けれど森の様子が前とは違っていて……。
感想
まだこぐまだったブラウンが無邪気にピアノで遊んでいるうちに、大きく成長する頃には、素晴らしいピアニストになっています。
それは、このブラウンだけに起きることじゃなくて、世界じゅうのどんな子どもにも起こりうるんじゃないかなと。
そうしてそれだけじゃなく、今度は多くのひとに観てもらう、聴いてもらうチャンスを逃さなかった、というのが大事。
小さなころから好きで好きでそのことだったらだれにも負けない、ということがあっても、だれも知らないままだったら、それは、その本人だけのものです。
最近で言う、崎山蒼志くんがブレイクしたのも、これに近いのではないでしょうか。
彼はあのネット番組に出ていなかったとしても、どこかでだれかが発掘して、同じような状況になってはいただろうとは思いますが。
運命の選択をしたブラウンが手にしたたくさんのものは、でも、ブラウンにあることを気づかせてしまいます。
それは、手にしたものではなく、じぶんが持っていないもの。
欠けている、なにか。
そのことに気づいたブラウンは、その瞬間、今まで以上に、「彼ら」のことが大切に思え、なくてはならないものなのだと自覚します。
という部分がとても好きです。
有名になったり、地位や名誉を手に入れたりして、それまでじぶんが大切にしてきたものをすっかり忘れてしまう、というひとは少なくありません。
でも、じぶんの原点を思い返し、その想いを捨ててしまわなかった、というのがブラウンの素敵でかっこいいところ。
世の中の、上に立ったとたんにひとが変わってしまったようなひとたち(政治家だとか、会社の重役だとか)、そういうひとたちにぜひ読んでもらいたいですね。
ラストのシーンは、多くのひとの胸に響くのではないでしょうか。
今までにいろんな絵本を読んできましたが、この作品ほど温かい気持ちになれた絵本はないかもしれません。
本当に、多くのひとに読んでほしい一冊。
子どもはもちろん、大人にも。
大げさだって言われるかもしれませんが、ほんと、一家に一冊あってもいいくらいです。
おすすめ対象年齢は6才くらい~大人まで。
ぜひぜひ読んでみてください。
まとめ
いかがだったでしょうか。
クマの出てくる絵本というのはもっとたくさんありますが、その中でも特におすすめの三作品です。
お子さんとの絵本の時間に、ご活用ください。
ほかにも、おすすめの絵本をまとめた記事がありますので、よろしければこちらも。
それではまた。