本棚のすき間

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【百人一首】を第一首から学ぶ(55・56)

百人一首を第一首から学ぶ(55・56)

 

55首目

滝の音は たえて久しく なりぬれど 名こそ流れて なほ聞こえけれ

大納言公任

 

滝の音が聞こえなくなって長い年月が経つが、その名声だけは消えることなく、今も世間に知れわたっていることだ。

 

 

解説

この歌に詠まれた滝とは、かつて京都・大覚寺の庭園につくられた人工の滝のことです。

残念ながら、作者の時代にはすでに水が枯れてしまっていましたが、姿は失われても評判が消えることはなく、その美しさは後世にまで語り継がれました。

 

かつて京都の大覚寺は、嵯峨天皇の離宮でした。

そして、天皇はそこに素晴らしい滝をつくり、その流れを楽しんでいたそうです。

 

「滝」「絶え」「流れ」「聞こえ」と4つの縁語が盛り込まれているだけでなく、下の句では「な」の音を重ねた滑らかな響きをもっています。

 

 

大納言公任は966年生~1041年没。

『拾遺集』『和漢朗詠集』など、編著作は多数。

和歌や漢詩、管絃にも優れたと言われています。

大納言経信とともに、和歌・漢詩・音楽に優れた人「三船の才」とされていました。

 

 

 

56首目

あらざらむ この世のほかの 思ひ出に 今ひとたびの 逢ふこともがな

和泉式部

 

もうすぐ私はこの世にはいないでしょう。

あの世への思い出に、最後にひと目あなたに会いたいものです。

 

 

解説

和泉式部は平安時代を代表する女流歌人です。

波乱万丈な人生で、とくに恋多き女性として、当時から知られていました。

紫式部は「文章や和歌をよくするけれど、素行は感心できない」と書き、道長にも「浮かれ女」とまで言わしめています。

しかしながら、だからこそ情熱的で時に情念すら感じるような和歌が生まれたのかもしれません。

 

「あらざらむ」という、「生きてはいないだろう」という物騒な言葉が、読む者を一気に引き込んでいきます。

続く「この世のほかの」は死後の世界、もしくは来世です。

 

わたしはもう長くないので、死後の思い出になるものがほしい。

その願いの内容が「今ひとたびの逢ふこともがな」、つまり「最後にひと目あなたに会いたい」ということなのです。

 

「あらざらむ」と「この世のほか」という和歌では伝統的でない言葉を使ったことと、ふつうならば、「この世の思い出として会いたい」とするところを、「死後の世界への思い出として会いたい」としたことは、当時、とても独特で挑戦的な表現だったそうです。

 

なお、和泉式部の晩年は不明な点が多くあります。

藤原保昌と結婚し、丹波に赴いたという記録が1013年頃に残っています。

また、娘の小式部内侍が夭折し、かなり気落ちしたとも言われています。

 

 

和泉式部は978年生~没年不詳。

中古三十六歌仙、女房三十六歌仙のひとり。

恋愛遍歴を重ね、恋歌を中心に数多くの作品を残し、『拾遺集』などの歌集に242首も選ばれています。

これは、女流歌人では最多。

その才能は、同時代の大歌人・藤原公任にも称賛されたそうです。

 

敦道親王との恋愛を物語風に綴った『和泉式部日記』というものが残っています。

この日記によると、敦道親王の兄で、和泉式部のもと恋人である為尊親王が亡くなり、喪に服していたとき、敦道親王に求愛され、ふたりは恋仲となったそうです。

女流歌人として名高かった和泉式部らしく、日記の中で140首あまりの和歌が詠まれています。

 

小学生おもしろ学習シリーズ まんが 百人一首大辞典

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