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【百人一首】を第一首から学ぶ(57・58)

百人一首を第一首から学ぶ(57・58)

 

57首目

めぐり逢ひて 見しやそれとも わかぬまに 雲がくれにし 夜半の月かな

紫式部

 

久々に会えたのに、それがあなたかどうかもわからないうちに帰るなんて、くもに隠れた月のようだわ。

 

 

解説

あわただしく帰っていく友人を、雲にかくれる月に見立てることで、別れを惜しむ気持ちをよんだ歌です。

相手がその人かどうかも見分けがつかないうちに、という表現はすこし大げさですが、月が瞬時に雲に隠れるくらいあっという間の出来事だったことを意味しているのでしょう。

 

もともと「雲隠れ」は身分の高い人の死も意味しますが、この歌には詞書があり、相手は幼馴染の友人であるとされています。

 

 

紫式部は970年頃生~1014年没。

藤原為時の娘で、大弐三位の母親。

『源氏物語』や『紫式部日記』を執筆した女流作家。

 

 

 

58首目

有馬山 猪名の笹原 風吹けば いでそよ人を 忘れやはする

大弐三位

 

有馬山近くの猪名に風が吹けば、そよそよ音がします。

そうよ、どうして私があなたを忘れるでしょうか。

 

 

解説

有馬山は現在の兵庫県神戸市にある山で、猪名の笹原はその南東に広がる平地です。

現在の尼崎市、伊丹市、川西市あたりになり、かつては一帯に笹が生えていました。

有馬山から風が吹けば、猪名の笹原がそよそよと揺れる。

子の様子は昔の人々にとってはなじみのある連想で、歌にも「有馬山」と「猪名の笹原」はセットで登場することが多いです。

 

また「いで」は「いやはや、まったく」といった意味の副詞です。

「そよ」は葉ずれの音を示す擬音であるとともに、現代語で言えば「そうよ」という返答の言葉です。

 

つまり、この歌で大弐三位は風がそよぐ様と「そうよ」という返事をかけているのです。

もともとこの歌は、しばらく会わなかった恋人から「私のことを忘れていませんか」という手紙をもらった時の返歌です。

その手紙に対し、「まったく、私があなたを忘れるわけないじゃない」と返しています。

 

 

大弐三位は999年生~1082年没。

藤原宣孝と紫式部の娘で、本名は藤原賢子。

母親と同じく、一条院彰子に出仕しました。

その後、後冷泉天皇の乳母に。

 

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