百人一首を第一首から学ぶ(63・64)
63首目
今はただ 思ひ絶えなむ とばかりを 人づてならで 言ふよしもがな
左京大夫道雅
訳
今となってはもうあなたのことは諦めようと思っていますが、せめてそのことを直接伝えたいなあ。
解説
この話は実話に基づいて作られているそうです。
作者は三条院の皇女で、伊勢神宮の斎宮の任を終え、都にもどってきた当子内親王とひそかに愛を育んでいました。
すでに当子は任を解かれ、恋愛についても自由の身でしたが、ふたりの密通を知った三条院は激怒します。
ふたりの仲を裂くために、当子に見張りをつけるなどして、道雅を遠ざけました。
こうした経緯で、当子との恋愛を禁じられた道柾が、悲しみに暮れながら詠んだのが、この歌です。
「今はただ 思ひ絶えなむ(今はもう想いを諦めよう)」とあるように、道雅はすでに当子との別れを受け入れていましたが、ただひとつ未練として残っていたのが、「人づてならで 言ふよしもがな(人を通じてではなく、直接伝えたい)」ということでした。
結果的に、道雅は左遷され、当子は出家の後、22歳の若さでこの世を去っています。
左京大夫道雅は993年生~1054年没。
本名は藤原道雅。
父が失脚し家が没落したため風流人として生きました。
64首目
朝ぼらけ 宇治の川霧 たえだえに あらはれわたる 瀬々の網代木
権中納言定頼
訳
周囲が徐々に明るくなってくる頃、宇治川の川面の朝霧も薄らいできた。
そこから現れたのが網代木だ。
解説
「宇治」は現在の京都府宇治市で、当時は貴族の別荘が多く建てられていました。
「網代木」とは、網代用の杭のことです。
網代は、川の浅瀬に杭を打って、竹などで編んだざるを仕掛け、魚を捕ることで、宇治の冬の風物詩でした。
『万葉集』の頃から歌に登場しています。
また、「霧」も宇治川の名物であり、数多くの歌に詠まれています。
時間の流れにそって、たんたんと情景の移り変わりを詠んでいるところに趣があります。
権中納言定頼は995年生~1045年没。
藤原公任の息子で、相模、大弐三位などと浮き名を流しました。
小式部内侍も恋人で、彼女が歌人として名を上げるきっかけをつくった逸話が有名です。

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