『水曜日の本屋さん』

- 作者: シルヴィネーマン,オリヴィエタレック,Sylvie Neeman,Olivier Tallec,平岡敦
- 出版社/メーカー: 光村教育図書
- 発売日: 2009/11/01
- メディア: 大型本
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『水曜日の本屋さん』
光村教育図書
シルヴィ・ネーマン:文
オリヴィエ・タレック:絵
平岡敦:訳
あらすじ
学校がお休みの水曜日、わたしは、いつも本屋さんへいく。
すると、いつもきまって店にくるおじいさんがいた。
わたしは絵本が大好きだけど、おじいさんが読んでいる本は、それとはまったくちがっている。
おじいさんは、ぶ厚い本を少しずつ読んでいた。
題名を見て、わかった。
それは戦争の本だった。
どうしておじいさんはそんな本を読むんだろう?
戦争の本がおもしろいのかな。
絵本を読んでいると、くすくす笑うこともある。
おじいさんは、ときどきポケットからハンカチをとりだし、ゆっくり涙をふいていた。
わたしが見ているのに、ある日、おじいさんが気がついた。
「年をとると、涙もろくなってね」
本当に、それだけなの?
いつもよりいくのが遅くなったある日、おじいさんはもう帰りじたくをしていた。
何をするのもゆっくりのおじいさん。
店を出るとき、本屋のおねえさんに、
「この本が、売れてしまわなければいいけれど」
といっていた。
そんなに好きな本なら、どうして買わないのかしら?……
感想
余白と余韻にあふれた一冊です。
水曜日の本屋さんには、やさしい、静かな時間が流れています。
わたしは絵本を、そして、おじいさんはぶ厚い戦争の本を読んでいて、ときおり涙しているおじいさんを、わたしはそっと見ていたりします。
本屋さんというよりも、どこか図書館のような場所で、登場人物もわたしとおじいさんと本屋のおねえさんだけです。
でも、そこにある見えないドラマが、読み進めているうちに少しずつ浮かび上がってきます。
読者は、純真無垢なわたしといっしょに、おじいさんのふしぎな行動にいろいろなことを考えさせられます。
いつもゆっくりじっくり読んでいる本があって、どうして、買わないんだろう?
お店を出ていくおじいさんの丸まった背中は、まるでサンタクロースのようで、背負ったふくろには何が入っているんだろう?
ラストはやさしい気もちで本を閉じることができました。
静かで温かな、冬の日のろうそくの明かりのような絵本です。