おたすけトミー でばんだよ!
おたすけトミー でばんだよ!
いしいひろし
白泉社
あらすじ
本が好きなこだぬきトミーがよんでいるのは、「いっぴきオオカミ」という絵本です。
ひとりでたびをしているオオカミは、こまっているみんなをたすけて、いつも大かつやくです。
そして、さいごに助けた相手から「ありがとう」といわれると、「いいってことよ」とかえして去っていくのです。
トミーはそのかっこよさにあこがれ、「いっぴきオオカミ」ならぬ「いっぴきこだぬき」になることを決意します。
さっそく、町へでかけると、ふうせんをとばしてしまったうさぎのミミちゃんがいました。
いっぴきこだぬきのでばんだと、トミーはおおはりきりでジャンプしますが、木のえだにひっかかっているふうせんには、ちっともとどきません。
うんしょ、うんしょとのぼりはじめ……「とれた!」と喜んだのはいいのですが、下を見て、その高さにびっくりしておりられなくなってしまいました。
そこにやってきたのは、カンガルーのピョンタおにいさん。
すっとトミーを助け、「どうもありがとう」とトミーがお礼を言うと、「いいってことよ」といって、ビョーンと去っていきました。
あんな風にとべるようになりたいな、と思いながらトミーが歩いていると、こんどは、池のほとりでひっくりかえっているカメのカメキチくんをみつけました。
今度こそ、いっぴきこだぬきのでばんだ、とトミーはかけつけるのですが……。
感想
自分もあんな風になりたい、とはりきりながらも、空回りしてしまうトミーがかわいらしい絵本です。
何かにあこがれ、その背中を追うようにして努力と失敗を重ねながらゆっくり成長していく子どもの姿って、いいですよね。
夢中になって頑張って、でもうまくいかなくて、そういう姿勢の先にこそ、このトミーの結末のような未来が待っているような気がします。
この絵本のトミーのように、だれでも、テレビの中のヒーローやヒロインにあこがれて、剣や変身ベルトや魔法のステッキなんかをほしいと思ったことがあるのではないでしょうか。
いまとなっては微笑ましいそんな過去を思い出しながら、親子で読むのも楽しいかもしれません。
いしいひろしさんの絵本はどれもやさしいタッチで、
この作品も大好きな一冊です。
とても癒されます。