学校司書をしていた頃の日々を、この頃よく思い出す。
今の仕事も自分には合っていると思うし、自分で決めて選択したことだから、もうそれはそれで仕方がないことなんだけれど。
どうせ思い出すのなら、と思って、このブログに当時のことをいろいろと書き残しておこうという気持ちになってきた。
自分の記憶を整理するつもりで、思い出しながら。
この記事に、学校司書の募集に応募するきっかけなんかを書いているので、こちらもあわせて読んでいただけたら。
まず、学校司書になることが決まったのは、確か、12月か1月頃だったような。
3月の後半になって、初めて、その勤務校に行くことに。
勤務校は山のふもとにあって、児童数は100人足らずの小さな小学校。
地元の町ではあるけれど、通っていた小学校は違うところだったから、よく知らない。
以前、書店員をしていた時に、イベントで一度だけお邪魔したことがあったくらい。
それで、スーツを着て、4月からお世話になります、とかそういったあいさつを頭の中で反復しながら向かった。
車をどこに停めればいいのかわからず、おそらくふつうは入らないであろう道に入ってしまった。
グラウンドの上の、その先に駐車場がある、ということはなさそうな道。
通り過ぎたあとで、もう一度元の道に戻ってみると、左手に明らかに駐車場のスペースが。
なぜ、あんなに目立つところを見落としてしまうのか。
きっと、ものすごく緊張していたのだろう。
自分が緊張していたということが、その後のおかしな行動でもよくわかる。
児童玄関の右端に職員用の玄関があって、そこに入ると目の前に「新任職員の皆様、本日はお越しいただきありがとうございます。校長室は右手にございます。そちらにどうぞ」と書かれた、たて長の小さな黒板が。
それを見て、ああ校長室に行けばいいんだ、右手なんだ、というこばかり考えていた自分は、右手にある窓口に気づきませんでした。
後々思えば、どうしてそんなわかりやすいものを見落としたのだろう、という感じですが、とにかく、そのまま、靴をスリッパに履き替えて、校長室へと向かってしまったのです。
事務の先生は、きっと音でだれかが来たことはわかっていたと思うので、入ってくるなりあいさつもせずに校舎の中に入っていった……! と驚いたはず。
驚いたどころか、不審者と思われたかもしれない。
来校者は普通、窓口であいさつをする、という常識的な考えが吹っ飛んでしまうくらい、緊張していたということで。
(帰る時にその窓口の存在に気づき、新しい司書はあいさつもせずに入っていった危険な奴と職員室でうわさになっているかもしれない、とひどく落ち込んだ)
校長室に入ると、昔、自分が通っていた小学校の校長室を思い出した。
そんなに、入ったことがあったわけじゃないだろうに。
勤務校の校長先生は女性で、ただ、その日会った方はこの3月で異動となるらしい。
イメージの校長先生というのは男の人で、だから、自分と同じように4月から新たにやって来る校長先生も女性と聞いて、ちょっと驚いた。
4月に提出する書類を受け取って、あとは校長先生とのお話。
この学校ではこういう取り組みがあって、こういうことに力を入れていて~、といった話を聞いて、何か聞いておきたいことや心配なことはありますか? と。
そこで、果物が食べられないのですが、給食の先生にお伝えすればいいのでしょうか? と自分が一番心配していたことを聞いた。
栄養士の先生にも相談してみてください、というようなことを言っていただき、そうか大丈夫なのかとひと安心。
その後、現司書の方と対面し、図書館での引継ぎへ。
その方とも、書店員だった時に一度だけお会いしたことがあったけど、ほとんど会話はしていなかったので、ほぼ初対面。
3月で、まだ底冷えのするような寒い日。
オレンジ色のキャップの暖かいお茶を用意していただいていた。
学校司書の仕事を引き継ぐ、ということ自体が初めてだったから、その時はよくわからなかったけど、いま思い出せばとてもあっさりした引継ぎだった。
本当に、最低限のことだけを伝えられた、という感じ。
電算化されていて、貸出や登録もパソコンでの処理となっていて、登録の仕方はマニュアルがあるので読んでみてください、くらいで。
フィルムのコートのかけ方は、実際にかけるものが無かったのか、教えてもらえなかった。
ぶっつけで、とその人は言っていた。
申し訳ないですけど、とにかくぶっつけで、と。
あんまり申し訳なくも思っていなかったんだろうな、と今ならわかる。
1時間半くらいだったかな、その、ざっくりとした引き継ぎが終わって、その日は帰ることに。
廊下で会った先生たちに、「4月からお世話になります」とあいさつをしながら、玄関へ。
最後に教頭先生も職員室から出てきてくださった。
この方は、4月からも教頭先生らしい。
真面目、という言葉はその人のためにあるのではと思いたくなるような、かちっとした話し方、言葉遣いをされる方だった。
それで、その日はおしまい。
帰る時に、校門の前に立って校舎を見ていると、これから、自分はこの学校の司書としてやっていくんだ、という気持ちがわいてきた。
不安ももちろんあって、でもそれ以上にわくわくする方が大きかった気がする。
子どもたちが本を好きになるきっかけを一つでも多く作りたい。
そういう前向きな気持ちでいっぱいになりながら、帰りの道を走った。
続く。