4月になるまでに、学校司書について、何かできる準備はないだろうかと本を読んでいた。
この2冊。

学校図書館スタートガイド: サンカクくんと問題解決! 学校司書・司書教諭・図書館担当者のための
- 作者: 学校図書館スタートガイド編集委員会
- 出版社/メーカー: 株式会社 少年写真新聞社
- 発売日: 2015/04/15
- メディア: 大型本
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こちらの本は、学校司書が学校の中でどのように機能し、どういった役割を果たしていけばよいのか、といったことが、シンプルに書かれていた。
まだ具体的なことが見えていない自分にとって、基礎の基礎という感じで、結構勉強になった。
経験者からすると、もの足りない中身と思われるかもしれないけれど、自分のようにど素人といっていい人間にはこれくらいがちょうどよかった。
それからこちらの本も。
こちらは、より具体的に、そして、より実践的なことが書かれていた。
オリエンテーションについてや、図書の時間の読み聞かせについて、図書の時間の使い方や、子どもたちとの関わり方についてなど。
図書の時間で、子どもたちが自然と静かに本を読むようになるためにはどうしたらいいか(オルゴールが鳴ったら静読タイム)といった具合。
実際に取り入れられそうなことがたくさん書かれていて、この本を読んでいると、ちょっと勇み足になるような感覚があった。
まだ、何も始めていないのに、いろんなことが上手くいくような。
学校司書になるにあたって、不安要素の一つに、読み聞かせがあった。
子どももいないし、小学生たちに読みきかせをしたことはほとんどなかった。
書店の毎月の読み聞かせイベントで、数回、読みきかせをしたことがあるくらいで、だから、全く何もないというわけではないんだけど、授業で毎日やるとなると。
先ほどの本には、学年別で、読み聞かせの時間をどのように使っていけばいいのか、といったことが書かれていた。
かゆいところに手が届く、というか、まさに不安に思っていることそのものだったので、とてもありがたい本だった。
そんなこんなで、その2冊を読んでいるうちに、4月の初出勤日が。
子どもたちはまだ春休みのその日、学校に行くと、保健室に通された。
新任の先生たちの控室らしい。
事務の先生がお茶を出してくれた。
自分よりも先に、二人の先生が中央のテーブルの周りにある椅子に座っていた。
おはようございますとあいさつをし、自分も空いている椅子に座る。
自分が座ったとたんに、その場が静かになってしまった気がした。
それまで、先にいた二人がしていたおしゃべりも、自分が来たことによって、フェードアウトしてしまったのでは、と不安になってくる。
と、救いの手をさしのべるように、別の先生がやってきた。
それからは「何年目ですか?」とか、「あっちの地区は~」とか、先生たちっぽい会話がちらほらと。
集まったのは5人、だったかな。
校長先生を入れると、全部で6人が今年度のこの小学校の新任の先生らしい。
時間になりましたので、と言われ、職員室に向かう。
前のドアから入っていくと、拍手の音が。
在任の先生方はにこにこしていたり、無表情だったり、あまり、人の顔を見ていられる余裕もなかったけど、どちらかといえば温かい感じ。
全校児童数が100人足らずということで、職員の人数も20人弱ほどだった。
職員室は中央にストーブがあって、それを囲うようにデスクが並んでいた。
一つの辺にデスクが4つか5つ。
イメージしていた職員室よりも、ずっと狭かった。
それで、整列とともに拍手はやんで、新任職員挨拶の会が始まる。
と、その前に、確か、校長先生だけが別で、もう一度職員室に入場しなおしたんだったかな。
やっぱり、校長先生は別格なのだな、と思った覚えが。
簡単にあいさつをして、新任職員も各自のデスクへ。
自分のデスクは、校長先生と対角線上、窓ぎわの一番後ろの席だった。(四角くなっているので、後ろではないんだけど)
すぐ後ろには、冷蔵庫と電子レンジがある。
隣には、養護教諭の先生が。
この方が非常に優しくて、その後大変お世話になった。
初めての職員会は、正直、何も覚えていない。
ひたすら事務的な話が淡々と進められていって、学校という職場自体にまだなじめていない自分にとっては、ついていくのに必死で。
何年も先生をやっている方々にとっては、いつもの時間に過ぎないのだろうけど、一日目の人間にはけっこうスピードも速い。
10時頃、一度、休憩に。
その後、町の職員(調理員・庁務・補助員・司書)は町役場に。
教育長や教育課のお偉いさんたちにあいさつに行くそうで、これは、新任でなくても毎年参加しなければいけないらしい。
行ってみて、あまりの意味のなさに驚いてしまった。
教育長のありがたいお話を聞いて、何だったか、その、あなたをこの学校の司書に任命します、というような紙を学校ごとまとめて渡される、それだけ。
それだけのために、車で15分の場所に、町内の学校じゅうから職員を集めさせるって、どうなの、と正直思ってしまった。
誰も、何とも思わないんだろうか。
まあ、当時は自分も、こういうものかと思うくらいだったっけ。
学校に戻ると、途中だった職員会の続き。
校務分掌という言葉も聞きなれていなかったあの頃、自分の名前がいろんなところに書かれていることが、単純に嬉しかった(あんまり書かれていない方が嬉しいと気がつくのはもう少しあと)。
その日のお昼は、どこかの業者のお弁当だった。
たぶん、職員全員がそれをとっていて、みんなで食べた。
で、会議室みたいにぐるっと横並びに座っているので、なんとなく、会話がしづらい。
そんななか、となりの保健の先生が話しかけてくださった。
次第に、ほかの先生ともちらほらと会話できるように。
でも、やっぱりものすごく緊張していて、ご飯がぜんぜんのどを通らない。
それで、先生たちってやっぱり皆さん食べるのがやたらと早い。
ごちそうさまをする頃になっても、自分のお弁当にはおかずが残ってしまっていた。
お腹的にももう限界で、ごめんなさいと思いながらふたをした。
その後、気づいたらほとんどの先生、というより自分以外の先生はみんな、スーツを着替えていた。
ジャージの先生もいれば、パーカーの先生も。
こういう、着替えを持ってきて、式的なものが終わったら楽な恰好をしていい、ということも知らなかったので、自分だけ無駄にお行儀のいい感じになってしまった。
午後の職員会が終わってからは、少しフリーな時間があったので、自分のメインの場所となる図書館へ。
図書館は、職員室からもそんなに遠くはない。
一つ奥の棟の二階、階段を上ってすぐ右手の突きあたりにあった。
嬉しいなと思ったのは、トイレがすぐそばにあったこと。
同じ階には5・6年生の教室があって、普段は子どもたちも使うトイレなのですが、子どもたちがいないときはいないので。
勤務校の図書館(正式には図書室だけど、子どもも先生も図書館と言っていたので、図書館と呼びます)は普通の教室より少し大きいかな、くらいの広さ。
カウンターに立って、全体が見えてしまうくらい。
春休み中だから当たり前だけどとても静かで、からっぽの図書館に立って、ああこれからこの図書館で働いていくんだ、という高揚感がふつふつとわいてきたのを覚えている。
まずは、この図書館にどんな本があるのか、ということを見て、それから、今日から子どもたちがやって来るまでの間に自分がすべきことなどをリストアップ。
とにかく、すべてが初めてで、しかも司書はこの学校に自分しかいないので、ほかの先生たちにも聞きにくい。
幸いなことに、パソコンが町内の他の小・中学校の図書館ともつながっており、メッセージのやり取りをすることができた。
前任の司書の方は、別の小学校に異動となっていたので、それを使って、どうしても困ったときには質問した。
ただ、向こうも向こうで新しい学校に異動したばかりなので、忙しいだろうということはわかっていたので、本当に困ったときだけ。
この、教えてもらいたいことを校内で教えてもらえない、というのがそれまでの職場とは全く違うところだった。
学校司書はそういう意味ではとても孤独ということをいきなり実感。
初日はそんな感じで、職員会や挨拶式なんかで話を聞いているうちに終わっていった。
それから、その日の夜に、新任職員歓迎会があった。
ホテルの宴会場のような場所で、学校の先生たちっていつもこんなところで飲み会をしているの? とびっくりした。
勤務校の先生方の平均年齢は高く、20代は自分しかいないくらいだったので、なんだかすごくかわいがってもらった気がする。
皆さん、とても感じのいい方たちで、頑張れるかも、と。
当時、考えていた企みが一つあって、それは、子どもたちだけでなく、先生たちにもより本を好きになってもらおう、というものだった。
子どもが本を好きになるかどうかは、環境によるものが大きいと思っていた。
ので、家族の次に、子どもたちの身近にいる先生たちを本好きにすることは、子どもたちの読書推進の一助になるのでは、と。
で、その歓迎会の時に、新任の先生だけでなく、引き続きの先生たちの自己紹介の時間もあった(人数が少ないので)。
それを聞きながら、この先生にはあの作家のあの本をおすすめしたいな、ということを考えながら、自己紹介をきいていた。
家で、エクセルの表にしたものを作ったりもした。
のだけれど、結局、その計画は実行には移せなかった。
それを実際に先生たちに伝えるといのが恥ずかしくなってしまったのだった。
チキンだった。
ただ、この時に思っていた、子どもたちの身近にいる人たちに本の面白さをもっと知ってもらいたい、という気持ちは、ちゃんと後の企画に結びついた。
それは、大人向けの図書館だよりの発行。
そのことについては、また改めて詳しく。
学校司書第一日目はそんな風に過ぎていった。
あっという間で、でも、確かに自分が学校司書になったのだな、という実感のある一日。
続く。