小学生(高学年)向けおすすめファンタジー小説15選
こんにちは。
今回は小学生、特に高学年におすすめのファンタジー小説を紹介していきます。
以前書いたこちらの記事では、ジャンルは決めずに、高学年の子どもにおすすめの小説、児童文学作品を紹介しました。
今回は ファンタジーに絞って、おすすめを紹介していきます。
児童書のファンタジー小説というと、『ネシャン・サーガ』や『指輪物語』、『ハリー・ポッター』といった骨太でぶ厚い作品をイメージされる方もいるかと思います。
「児童書」「ファンタジー」等で検索をして、よく紹介されているのもそういった長年読み継がれてきた作品が多いです。
この記事で紹介しているものは、どれも比較的読みやすく、それでいて、その不思議な世界に没入できるような作品たちです。
ファンタジー好きの子どもへのプレゼントにもおすすめですし、新たな読書の扉を開けるきっかけにしていただければ幸いです。
『図書館からの冒険』
はじまりは、取り壊しが決まった柴野崎小学校の図書館に渉(わたる)が忍び込んだことからだった。
小学校6年生の渉は柴野崎小学校の図書館からシバノザキ島にワープしてしまう。
島は一年前の大きな地震と嵐であちらこちらが崩壊し、島民は気持ちの悪い生き物に怯えながら生きていた。
しかもこの島にはその昔、渉の大おじさんがくらしていたらしい。
島の少女サキとであい、さまざまな危険にあいながら行動をともにし、渉は仲間たちと島を救おうとする。大長編ファンタジー。
数々の名作ファンタジー小説を書いてきた岡田淳さんの最新作です。
豊かになるとはどういうことだろう? という、この作品の根底にある問いに、大人も考えさせられるような物語でした。
あらすじにある「気持ちの悪い生き物」というのが、岡田淳さんの挿絵ではなんだかちょっぴり可愛らしいのですが、この生き物がくせもので……。
なぞの島で出会うサキという少女と主人公のやりとりも読みどころです。
『白狐魔記 源平の風』
仙人について不老不死と数多の術を己のものとした仙人ギツネ・白狐魔丸。
彼が日本史上の大事件や英雄たちと遭遇し、なぜ人間同士が殺し合うのかという問いの答えを探しつつ時を旅する大河ファンタジー。
初回の英雄は源義経。
私自身、中学生の時に読んで、ドハマりしたシリーズです。
仙人の弟子となったキツネが主人公の歴史ファンタジーで、読んでいると、自然と歴史の大まかな流れが頭に入ってきます。
この本をきっかけに、歴史が好きになったという子もいるのではないでしょうか。
もちろん、そもそも歴史が好きな子が読んでも楽しめます。
巻ごとに主人公が活躍する時代が変わっていくので、義経がいたり、信長がいたり、元寇があったりします。
このシリーズを読むと、きっと、どこかの時代の誰かを好きになります。
『9月0日大冒険』
夏休みなのに、ぜんぜん遊べなかった子にやってくる特別な日、それが9月0日。
真夜中、家のまわりはジャングルになって、ぼくらは、冒険にでかけたんだ!
世代をこえて、愛されてきた名作を文庫化。
まず、始まり方がいいんですよね。
夏休みがちっとも充実していなかった主人公。
彼が、その夏休みの最後の最後に体験する、ふしぎな一日、それが9月0日の冒険という、わくわく感がたまりませんね。
この作品は、特に恐竜好きの子におすすめです。
とにかく恐竜好きな子どもはこれを読むべし、です。
夏休みを楽しく過ごせなかったのは主人公だけではありません。
同じクラスの理子や明もです。
三人はそれまであまり話もしたこともなく、冒険の中で衝突しながら、お互いの知らなかった部分を知っていきます。
それぞれに欠点がありながらも、それをお互いに補い合い、様々なピンチを乗り越えていく様にハラハラドキドキします。
ラストはなんとも言えない幸福感に包まれながら本を閉じることができます。
『大坂オナラ草紙』
小5の平太は絵を描くことが得意だが似顔絵で友達を傷つけ、もう絵を描かないと決めていた。
ある日平太は祖父の古文書を見て江戸時代へタイムスリップしお篤と出会う。
泥棒と疑われたお篤を救うために描いた人相書きが評判となるが、食べすぎたおいものせいでオナラをしたとたん、現代に戻ってしまう。
その後も平太は、オナラを駆使して現在と過去を行き来、現代では学級新聞コンテスト、江戸時代ではかわら版の絵師に挑戦する。
講談社児童文学新人賞佳作を受賞したこの作品。
江戸時代ときくと、歴史ものはちょっと……とちょっとしりごみしてしまう人も多そうですが、難しい作品というわけではありません。
高学年の子どもならすらすら読める文章ですし、現在と過去を行き来するストーリーは飽きるところなく読み終えられると思います。
絵を描く、ということが一つ主人公にとって大きなテーマであり、悩みの種であり、活躍の手段でもあります。
歴史が好きな子や、絵を描くのが好きな子におすすめです。
『シャドウ・チルドレン』
アメリカのとある町。
12歳の少年ルークは、両親、ふたりの兄とともに、森の中の家で静かに暮らしている。
兄たちと違い、ルークは学校へ行くことも、友達と遊ぶこともできない。
なぜなら、ルークは、存在してはいけない3番目の子供「シャドウ・チルドレン」だから。
ある日、ルークは、隣に引っ越してきた家の窓に、その家には存在するはずのない人影を発見する。
あれはいったい…?
思いきって忍びこんだルークが廊下のつきあたりの部屋をのぞくと―。
近未来SFといった世界観で、全体的に暗い雰囲気の漂う作品です。
ただ、翻訳が軽いタッチの文体となっているので、読みにくいということはないかと思います。
人口統制のため、三人目を産んではいけない社会で生まれてきた主人公。
その日常のなんと辛く切ないことか。
でも、あらすじにあるようなある日のできごとによって、ルークの日々が変わっていきます。
数ページ読んでみてください。
どんどん惹きこまれていきます。
『妖狐ピリカ・ムー』
人間たちを恨みながら妖狐として生まれ変わったピリカ・ムーは、3つの願いと引き換えに、人間の魂(ハート)を盗もうとする。
しかし、呪いをかけようとした少年・光太郎の優しさに、気持ちが揺らぎはじめる。
妖怪少女と野球少年、二つの<ハート>が織りなす魔法と希望のファンタジー。
もともとは、浜松市で上演されたミュージカル劇『この星に生まれて』を小説化した作品です。
大妖怪になる試験に合格するため、妖狐のピリカは人間のハートをとろうとします。
しかし、 狙いをさだめた男の子は、妖怪になる以前、自分を助けてくれた子で……。
恋や友情、環境破壊への警鐘といった、ジブリ映画のようなテーマが漂うこちらの作品です。
児童文学らしい軽妙で読みやすい文章でありながら、その奥底にある自然との共存というメッセージが後半になるにつれて色濃くなっていきます。
ピリカは大妖怪になることができるのでしょうか?
それとも……。
『むこうがわ行きの切符』
子どもたちが、ふと、ここじゃない、今じゃない、どこでもないどこかに行ってしまう、不思議な物語が5編。
ケンカした親友と再会したり、あったことのないお父さんの気持ちが聞けたり……
会えるわけのない人に会って、子どもたちの心はすこし変わる。
ふしぎでわくわくして、ぽろっと涙もこぼれる物語。
一度しか会ったことのないひいおばあちゃんのお見舞いにいくと、「やっと来てくれたんか」と言われ、嬉しそうに笑うひいおばあちゃんをちあきは不気味に思います。
押し入れに入って眠ったちあきですが、目が覚めて外に出ると、見たこともない家で、そこには知らない女の子が……
仲良くなった二人はいろんなことをして遊びますが、ちあきは元の世界に帰らなければいけなくて……
タイムトラベルを扱った短編が5作収録されています。
どれも面白いだけでなく、どこか心にずしっとくる話なので、あー面白かっただけで終わりません。
特に、3話目の「ブレスレットの秘密」なんかはもう、トラウマになりそうなレベルでおそろしい読後感。
タイムスリップやふしぎなことが起こる話が好きな子に特におすすめです。
『魔女になりたい!』
「わたし、ぜったい魔女になる!」
児童養護施設で育ったベラ・ドンナは、生まれたその日から魔女になりたい! と願っている女の子。
ある日、リリスさんというすてきな女の人があらわれて、ベラ・ドンナをひきとりたいと申しでるが…。
本気で魔女になりたい女の子、ベラ・ドンナの魔女修業の物語。
はたこうしろうさんのイラストに惹かれて読んだ本でしたが、ストーリーも非常に面白かったです。
魔女になりたい孤児が主人公で、なかなか里親になりたいという人が現れない中、リリスさんという女性が現れて……
その先はネタバレになるのであまり多くのことは言えませんが、リリスさんと主人公の関係性が好きです。
魔女ものが好きな子だけでなく、友情物語が好きな子にもおすすめしたい一冊です。
『おれからもうひとりのぼくへ』
ある日、自転車でおれは自分とよく似た男の子とぶつかった。
その時から、何もかもがちょっとずつ違うんだ。
家族も友だちも、学校も…。
元の世界の親友たちのおかげで、
ようやくパラレルワールドに来てしまったことがわかった。
新しい世界での生活も案外悪くないが、やはりもどりたい。
はたして、無事にもどることはできるのか! ?
がっつり友情のお話です。
普段当たり前で、何とも思わない友だちが、全然違うキャラになってしまってはじめて、その友だちの良さがわかる。
そんな何気ない時間の大切さも一緒に感じられる良作です。
短いので、さらっと読めます。
中学年からおすすめできる一冊です。
『二分間の冒険』
たった二分間で冒険?
信じられないかもしれません。
でもこれは、六年生の悟に本当におこったこと。
体育館をぬけだして、ふしぎな黒ネコに出会った時から、悟の、長い長い二分間の大冒険が始まります。
この作品は、タイトルにもあるように二分間の間に起こる物語です。
でも、ページ数は200ページ以上。
どういうことなんだろう? と思って読み始めると、あれよあれよという間になぞの世界に迷い込んでしまうのです。
竜との「なぞなぞ」対決が楽しいです。
児童書といえども、大人も楽しめるので、お子さんの後か前に読んで、一緒にこの世界に浸ってもらえると、より楽しいかと思います。
また、作品の大きなテーマである、「一番確かなもの」とは何か? という問いに、主人公と一緒に考えながら読むことができます。
なんとなく答えがわかっていても、最後にはきっと感動できると思います。
『穴 HOLES』
無実の罪で少年たちの矯正キャンプに放りこまれたスタンリー。
かちんこちんの焼ける大地に一日一つ、でっかい穴を掘らされる。
人格形成のためとはいうが、本当はそうではないらしい。
ある日とうとう決死の脱出。
友情とプライドをかけ、どことも知れない「約束の地」をめざして、穴の向こうへ踏み出した。
毎日、一人一つずつ穴を掘ることを命じられた少年たちの物語です。
100年以上昔にあった出来事が現在に繋がっていったり、一見繋がりそうにない物が意外な関係性を持っていたりと、様々な伏線が回収されていくのがこの作品の醍醐味の一つです。
また、ユニークな登場人物たちとのやりとりも読みどころです。
脇の下やジグザグ、磁石といったへんてこなあだ名のついた仲間たち(?)と何かを企んでそうな大人たちの中で、主人公のスタンリーは生き残れるのでしょうか……。
また、こちらの小説は、子どもだけでなく、大人も十分楽しめます。
伏線回収といえば伊坂幸太郎さんの作品という勝手なイメージなのですが、そういった小説が好きな大人にもぜひ読んでいただきたい一冊です。
『泥』
その学校は、立ち入り禁止の森にかこまれていた。
森には、人知れずサンレイ・ファームという農場がある。
クリーンなエネルギーを育てているらしい。
学校で、森で、農場で、少しずつ、少しずつ、なにかが起きている予感が…。
近未来パニック小説!?
『穴』の作者であるルイス・サッカーの新境地とも言える物語です。
今作は始終不穏な雰囲気が漂い、 読む人によってはホラー小説のように感じられる作品でもあります。
主人公のタマヤと年上で幼なじみのマーシャルはいつも一緒に下校しています。
タマヤの親が心配性で、一人で帰ることを禁じているのです。
ある日、マーシャルはいつもと違う道から帰ろうとします。
なぜだかわからないまま付いていくと、そこは立ち入り禁止の森で、地面には得体のしれない泥が泡を吐き出しています……
後ろからマーシャルをいじめているチャドという男の子が追ってきて、ふたりはつかまってしまいます。
反撃をしようと、タマヤが足元の泥をチャドに投げつけ、やっとのことで難を逃れました。
しかし、その泥によって、タマヤの手は次第におかしくなっていき……
泥を顔に受けたチャドは……
ぜひその結末をお確かめください。
『森の石と空飛ぶ船』
はじまりは、白いネコだった。
桜若葉小学校の六年生シュンは、ネコを助けたのがきっかけで、別世界のサクラワカバ島へ行き来できるようになる。
ふしぎで満ちあふれるその世界に魅了されるシュン。
ところがある日、島の自然を守り続けている「森の石」をねらうロボットたちの存在に気づく。
島を守るため、シュンは仲間たちとともに立ち上がった。
『カメレオンのレオン』など桜若葉小学校シリーズで活躍したキャラクターたちも登場する、大長編ファンタジー。
最初に紹介した『図書館からの冒険』の姉妹作ともいえる作品です。
こちらも、現実の世界と繋がった不思議な世界での冒険物語、という点では同じです。
が、世界観や、その島の日常などは少し違っています。
『カメレオンのレオン』や『夜の小学校で』などの作品に登場するキャラクターが何人か登場するので、先にそちらを読んでからでも楽しめます。
読んでいなくても、もちろん楽しめます。
ロボットとの戦いや、主人公が異世界で活躍する話が好きな子に特におすすめです。
『わたしのチョコレートフレンズ』
『星空点呼 折りたたみ傘を探して』『セカイヲカエル』につづく、いじめをめぐる物語の第3弾です。
小学5年生の凛太と、夏に隣に越してきた万緒が語るお話。
新学期、万緒は凛太と同じクラスに。万緒は友情をテーマに書き始めていた物語を、クラスで理想的な親友同士に見えた2人をモデルに変更して書き進める。
凛太はおさななじみの直政が、同じスイミングスクールに入ってどんどん力をつけていく姿に、距離を感じ始める。
物語のモデルにした親友2人の仲が次第にくずれ、万緒の書く物語がクラスの出来事とリンクしていく。
いじめをいじめる側でもなく、いじめられる側でもなく、第三者目線から描いた、いじめ三部作のうちの一作です。
友情をテーマに書き始めた物語を、クラスの人物をモデルに変更して書いていくと、その物語と現実が少しずつリンクしていき……というふしぎな読み味の作品でした。
いじめ問題となると最後は流れで仲直りして、という結末になりそうですが、この小説は単純にはいよかったね、だけで終わらせられないところがあります。
重いテーマではありますが、文体は読みやすく、物語も飽きることなく読み進められるかと思います。
学校で、こうした作品をもっと読まれて、他者の目や心に気持ちをむけられる子どもが増えていくことを願いたくなる一冊でした。
『ルドルフとイッパイアッテナ』
猫と人間、それぞれの愛と友情の物語。
ひょんなことから、長距離トラックで東京にきてしまった、黒猫ルドルフ。
土地のボス猫と出会い、このイッパイアッテナとの愉快なノラ猫生活がはじまった……。
映画化もしており、非常に有名な作品です。
主人公のネコのルドルフは、暮らしていた町から遠く離れた東京に来て、そこのボスをやっているイッパイアッテナと親しくなります。
このイッパイアッテナは文字の読み書きができるというすごいネコなのです……。
友情や生き方、身の振り方や言葉遣いなど、児童文学でありながら様々なことを読みながら学べる一冊でもあります。
『ゲキトツ』
超能力を手に入れた。
でも、コレって、あり?
ぼくは、ふつうのフォワードだった。
むしろ、得点力のない。
でも次の試合で、ゴールポストに激突してから不思議な力が身について……。
トラウマ児童文学として有名なあの『電話がなっている』の作者である川島誠さんの、スポーツ小説であり、SFであり、少年の成長物語でもある作品です。
川島誠さんの小説は、『800』や『夏の子どもたち』といった、少年と性の印象が強いかもしれませんが、この作品では性の描写はほとんどありません。
足も速く、実力もある。でも、プレッシャーにものすごく弱くて、いつも試合でその実力を発揮できない少年が主人公です。
ある日の試合中にゴールポストに頭をぶつけたことにより、彼は超能力を手に入れます。
その超能力とは、他人の心の声が聞こえるというものです。
相手チームの選手の心の声が聞こえると、主人公のプレーは激変。
相手の選手がどう動こうとか、どうボールを回そうとか考えていることがわかってしまうのですから、当然です。
試合で大活躍し、さらには、株の情報を聞いた主人公はそれをお父さんに話し……
でも、良いことばかりというわけでもなく、この能力、聞きたくない声も聞こえてきてしまうのです。
たとえば、先生の声、気になっている女の子の声、そしてお母さんの「お父さんを毒殺……」といった物騒な声まで。
軽妙で読みやすい文体なので、普段小説を読むのが苦手という子にもおすすめです。
サッカーをやっている子には特に。
まとめ
いかがだったでしょうか。
どの作品も、子どもだけでなく、大人が読んでも面白い作品ばかりです。
子どもに買い与えると同時に一緒に読んで感想を共有するというのも楽しいと思います。
ファンタジー好きの子へのプレゼントにもおすすめです。
ぜひ、参考にしてみてください。