最近、この本を読んだ。
中村航さんの作品で、いわゆるライトノベルのレーベルとされる電撃文庫から出ているもの。
中村航さんをどれだけ好きかについては、この記事に書いてあると思う。
本を好きになるきっかけをくれた作家で、好きな作家というのはたくさんいるけれど、その中でもやっぱり特別な人。
であるのに、このバンドリという作品にはなかなか手が伸びなかった。
わりと初期の頃から読んでいるので、中村航さんはどちらかというと純文学というイメージがある。
といっても最近は、
こういう、ちょっとライトな感じの小説が多くなってきている。
この頃の作品の雰囲気が好きだった自分としては、若干の寂しさも覚えつつ、でも、中村航さんの作る世界や文章、文体が好きなことには変わりがなかった。
で、バンドリの原案を担当しているという話を聞いた時には、その気持ちがピークに。
好きだったバンドが、それまではメディアに全然出なかったのに、突然出るようになってなんだかなんだかっていうあの感じ。
まあ、よくある話なんだろうけれど。
いわゆる音ゲーやアプリのゲームに疎いということもあって、バンドリの世界にはどうしても入っていくことができなかった。
そんなこんなで、中村航さんの小説が出ているにも関わらず、それを読むこともなくここまで来てしまっていた。
で、最近の話。
この四月から高校の図書館で働くことになって、ライトノベルについてもいろいろと勉強しなければいけなくなった。
そういえば、とふとバンドリのことを思い出した。
ライトノベルは表紙やあらすじだけではわからない過激な描写があったりしてそこが怖いところでもあるんだけど、中村航さんのラノベにそういう描写があるとは思えない。
そういう安心感もあり、また、世間的にもアプリやアニメが人気だったりすることも考慮して、図書館に入れてみることに。
そうして、ようやく、バンドリの小説版を読んだ。
面白くてため息が出た。
なぜ、これをいままで読まずに来てしまったのか、と。
なんというか、中村航さんの文体はそのままで、キャラクター色が強めになっている。
会話も多めだったり、展開がスピーディだったり、ライトノベルっぽさはありつつも、完璧に中村航さんの世界だった。
あたり前といえばあたり前だけれども。
嬉しかったのは、物語の所々に、過去作のファンならば大喜びするであろう様々なものが用意されていること。
バンドリという物語自体ももちろん楽しめるし、これまでの中村航さんの小説を読んできた人にとっては、名言の総集編のような。
だから、きっと、バンドリから入った人も中村航さんの他の小説を楽しめるはず。
この、バンドリの小説を読んでいたく感動してしまい(バンド小説が大好物ということもある)、バンドリのアプリをやってみようと入れてみた。
でも、容量の関係で、ストレージ云々をどうにかしないとというぐだぐだが生じてしまい、しばらく放置していた。
で、そういうことをつい後回しにする性格がわざわいして、小説を読んでしばらくしてからやっと、アプリを始めることができた。
それが、昨日の日曜日の話。
月曜日の今日、図書館にいると、ひとりの坊主頭の男子がやって来て、バンドリの小説版を手にとった。
「バンドリ好きなの?」
ときくと、
「めっちゃ好きです!」
と満面の笑顔(かどうかはマスクをしていたのでよくわからない)。
アプリ(ガルパ)もやっていると言うので、昨日始めたばかりなんだよねと話すと、
「実は俺、ランク〇〇なんですよ」
と誇らしげに言う。
それがどれくらい凄いことなのかわからないけれど、とにかく半端じゃないことのようだったので、凄いね! と。
ふだんあんまりバンドリの話をする友人がいないのか、彼の目がきらきらしていた。
それで、またバンドリの話しようと言うと、お昼休みにも来てくれた。
図書館内でゲームは禁止されているので、廊下の暗がりでひっそりと、ガルパの音ゲーの部分をやって見せてくれた。
ちょっと引くほど上手かった。
上手いというか、ほとんどノーミスで、もう、何をしているのかよくわからない。
「いつもは布団に寝ころがりながらやってるんで」
とやりにくさをアピールするけど、ぜんぜんそんなこと感じないくらい上手い。
きのう始めたばかりの自分からすると、もの凄い高いところにいることがわかった。
話しているうちに電話が鳴ってしまって彼も去っていった。
コミックも入れてくださいよと言われたので、その小説版をいろんな人におすすめして、他にもコミックを入れてほしいという人が出てきたらね、と言っておいた。
ちょうど、中村航さんの蔵書にない小説も新着の棚にある。
彼や、彼の友だちがいつかバンドリを読んだり、中村航さんの小説を読んだりして、それまでは読書をほとんどしなかったのに、読書に目覚めるということがあったらいいなと思って、わくわくした。
こんな出会いがこれからもたくさんあると嬉しい。
この頃、少しずつ、図書館に来てくれる生徒も増えてきた感じがする。
焦らずにやっていこうと思う。
そんな月曜日。