『ブラックホールの飼い方』
ミシェル・クエヴァス
小学館
11才の女の子、主人公のステラは宇宙研究施設NASAからの帰り道、何者かにあとをつけられます。
まっ黒で、目の奥に小さな銀河が広がっていて、何でも飲みこんでしまうその正体はブラックホール。
なぜだか自分に懐いてしまったブラックホールを、ステラはこっそり飼うことにします。
ブラックホールに「ラリー」という名前を付けたステラは、その後、犬にするようにしつけをするべく奮闘しますが、なかなか上手くいきません。
それどころか、大切なパパとの写真や、町じゅうのいろんなもの、そして、学校が休みのあいだお世話をしなくちゃいけないハムスターのプンちゃん(めちゃくちゃくさい!)を吸いこんでしまいます。
このままありとあらゆるものを吸いこんでいき、世界が終わってしまうのかと思いきや、ラリーはステラの元にもどってきて、そして、ステラが要らないと思っているものを吸いこみはじめ……
まず、ブラックホールを飼う? という驚き。でも、このブラックホールのラリーがなんだか可愛らしくって、いろいろとんでもないことをしでかしてしまうんですが、どうにも憎めないのです……。
主人公はパパを亡くしており、その心にはぽっかり穴が開いてしまっています。
その闇とラリーの行動がリンクしていて、それが、彼(?)を憎めない一因かもしれません。
あれもこれも要らない。いっそ、全部無かったことにしてしまえば楽かと思いきや、そんなことはやっぱりありません……。
大切なものとそうではないもの、なくなってほしいもの。
自分の周りにあるたくさんのものの見方がほんのちょっぴり変わる。
そして、失くしてしまったものとの向き合い方を笑いを交えながら教えてくれる一冊です。
そして、この小説に欠かせないのがステラの弟!
彼の言動に何度笑わせられたことか。
どうしたらこんな風に笑いを誘える文章が書けるんだろう。
そう思わずにはいられませんでした。
おすすめです。