『イマジナリーフレンドと』
ミシェル・クエヴァス
小学館
主人公のジャック・パピエはフラーという女の子のイマジナリーフレンドです。
イマジナリーフレンドを持つ子どもが主人公の話はよくある気がしますが、その逆は珍しいような(自分が知らないだけ?)。
ジャックはふつうの子どものように考え、遊び、暮らしていますが、ある時、自分がイマジナリーフレンド、空想上の人物であることを知ってショックを受けます。
一方で、フラーの空想癖、行動も度を越していき、ついには病院に連れていかれてしまいます。
そんな中、ジャックは自分と同じように想像上の存在であるローラースケートをはいたカウガールと出会い、また、イマジナリーフレンドたちが集まる会というものが開かれていることを知ります。
そこで、ジャックはオドロオドロというイマジナリーフレンドから、自由になる方法を聞くのですが、その方法とは……
この小説は、ジャックの回想録という形式で進んでいきます。
この、ジャックの一人称の語りがユーモアにあふれていて、どのページにも必ずといっていいほど、くすりとさせられる表現があります。
例えば。
ペットショップに犬を見にきた女の子の様子を
「電機工場に入りこんだガか、ハエの親睦会に居合わせたカエルのように」
とか、物語の流れの中で読まないと伝わらないかもしれませんが……
読者は皆、(多分)現実の人間でしょうけれど、だからといって、ジャックに感情移入できないかというと、そんなことはぜんぜんなくって。
ジャックの悩みは私たち、そして子どもたちの持っている苦悩と重なるところがたくさんあるはずです。
アイデンティティの話だけじゃなく、人生における大切な色々について。
この作者のユーモア、子どもの心を見つめるまなざしがとても好きです。